去る11月30日、メジャーリーグ挑戦を目指す日本人選手(アマチュアを含む)、NPBとの契約を希望する外国人選手をサポートしていく「ワールドトライアウト2019」(以下=WT)が開催された。巨人、西武で活躍した高木勇人投手が2回無安打と好投したが、ファンの注目は清原氏に集まっていた。
「WTで合格した選手たちによって、チームが編成され、社会人、独立リーグなどと試合をしていくと聞いています。清原氏の采配が見られるのはその時」(スポーツ紙記者)
清原氏は監督として成功できるのか…。WTの概要が説明された会見では、「挑戦、再起を目指す野球人にとってもっとも適した人材」と、彼を抜てきした理由が伝えられていた。しかし、批判的な声もないわけではない。
「彼が指導者の勉強をしてきたという話は聞いたことがありません。引退後、プロ野球中継のゲスト解説を何度か務めましたが、プレーや試合展開を的確に読んでいたようには見えませんでしたが」(プロ野球解説者)
過去の話をしても仕方がない。しかし、これだけは断言できる。清原氏には「名将となる条件」が備わっている、と。
プロ野球界には、こんな“格言”がある。監督になれるかどうかは、持って生まれた資質も大きいが、歩んできた野球人生によって決まる。名将と呼ばれる監督は、現役時代、必ず、名将の下で野球をやっている――。
清原氏は西武黄金期を築き上げた森祇晶氏の下で、野球を学んだ。巨人では長嶋茂雄氏、オリックスでは仰木彬氏(故人)の下で活躍してきた。
「チームを優勝に導いた指導者には、独特の感性があります。勝負どころを読み取る眼力、ペナントレースを制するため、選手に発奮させるタイミング、勝敗を度外視して選手を育てなければいけないところも見極めています」(球界関係者)
新任監督は自身の現役生活において、もっとも影響を受けた指揮官の采配を踏襲するとも言われている。
西武を指揮していたころの森氏は打順を変更する時、その対象選手を呼び、その理由を的確に説明していたという。打順を下げられれば、面白いはずがない。しかし、チームの勝利や今後の成長に必要なことなどを伝え、納得させていた。
独特の感性と言えば、長嶋氏の右に出る者はいない。若手選手を抜てきする際、失敗のリスクも覚悟しなければならない。それでも、抜てき後にチームにもたらす相乗効果を優先させ、そのタイミングを試合の中で感じ取っていた。
「仰木氏は、迷ったら、最後は選手のためになるのはどちらなのかを考えていました」(ベテラン記者)
高校時代はPL学園を甲子園の常連校に引き上げた中村順司氏に学んだ。これほど恵まれた環境で学んできた野球人はほかにいない。
先のWTだが、清原氏のユニフォームの背番号は「3」だった。FAで巨人への移籍を決意した時、「背番号5」を勧めたのは森氏だった。五大陸、そんな壮大な思いを込めて勧めたそうだ。「5」ではなく、プロ野球人生をスタートさせた時と同じ「背番号3」を選んだ理由は教えてくれなかったが、「初心に戻って」の思いもあったのではないだろうか。「監督・清原」の采配に期待したい。
(スポーツライター・飯山満)