大リーグ機構と同選手会はベンチ入りメンバーの増員や、投球間隔を短くする「20秒ルール」の徹底などを協議している。その中で、今回は見送られるが、導入は時間の問題と目される“大きなルール変更案”についても意見交換されていた。ナショナル・リーグへの指名打者制(DH)の導入だ。
「(導入するとしたら)早くても2022年以降になる」
マンフレッド・コミッショナーはそうコメントしていた。しかし、ナ・リーグへのDH制導入はずっと以前から協議されていたものだ。仮に導入されるとなれば、日本のプロ野球界にも影響が及ぶだろう。投手が打席に立つ日本のセ・リーグが取り残されてしまうからだ。
米国人ライターがこう続ける。
「ベンチ入りメンバーの増員、20秒ルールの徹底、そして、DH制。大リーグ機構と選手会は、実は『同じテーマ』を話し合っているんです。全ては試合時間の短縮ですよ」
ベンチ入りメンバーが増えれば、指揮官は選手交代で迷う場面が減る。特に捕手がそうだが、特殊なポジションを守る選手がいなくなると試合が成立しない。指揮官は捕手、遊撃手など守備のキーマンに代打を送るとき、迷い、考えることが多いという。
また、DH制が導入されれば、次イニングの攻撃で投手に打席が回ってくるかを考えずに済む。20秒ルールの徹底もそうだが、選手交代による「時間のロス」をどう減らすかが話し合われていたわけだ。
東京五輪の野球・ソフトボール競技においても、聞き捨てならない情報が交錯していた。次大会のフランス・パリ大会では、野球・ソフトの継続は決まっていない。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)も存続を訴えている。しかし、1月末に開催されたWBSC理事会で、同主催の一部国際大会を「7イニング制」に変更する方針を固めた。東京五輪は通常ルールの9回で行われるが…。
「他競技も競技時間の短縮に乗り出している。野球・ソフトも…」
主要理事は会見でこのように話していた。
日本のペナントレースも時間短縮に努めている。NPBの公式HPには平均試合時間数を表記。球場でもバックスクリーンに試合時間をカウントする時計を設けるなどしている。そこまで過敏になる理由があるのだろうか。
「テレビ局の意向ですよ。五輪もメジャーリーグ中継も巨額の放映権料で支えられています。『試合終了時間が読めない』というのが、野球競技の弱点でもあるので」(前出・米国人ライター)
7イニング制になれば、ベンチ入りメンバーが減り、五輪大会の支出減にもつながる。2イニング短縮すれば、テレビ中継の可能性も広がるというわけだ。
日本の野球は選手起用を心理戦として、ファンを楽しませてきた。スピード感のある試合展開にすることは否定しないが、そのうち、日本のセ・リーグもDH制の導入を真剣に検討しなければならないときが来るようだ。
(スポーツライター・飯山満)