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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」★セブンが示す消費の未来

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提供:週刊実話

 流通業界最大手のセブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店、スーパー、コンビニの大規模閉鎖を含む構造改革策を10月10日に発表した。グループ従業員を3000人規模で削減する大リストラだ。百貨店では、来年8月から再来年2月までに西武百貨店岡崎店など5店を閉鎖するとともに、2店の店舗面積を縮小する。スーパーのイトーヨーカドーは、今後、33店舗で他企業との連携、あるいは閉店を検討する。セブンイレブンは、今年度下期から約1000店舗の不採算店を閉鎖、移転する。

 今回の構造改革策で注目すべき点は2つある。1つは、こうした大規模リストラが、過去最高益を記録するなかで断行されるということだ。セブン&アイ・ホールディングスは、今年2月期で4065億円の経常利益を出している。リストラは、体力のあるうちに、将来の構造変化に備えようということらしいが、そのやり方は情け容赦ない。

 例えば、今回閉鎖が決まった西武百貨店福井店というのは、1928年に「だるま屋」として創業された西武百貨店の原点である。同じく閉鎖される西武大津店のある滋賀県は、西武グループの創始者、堤康次郎の出身地だ。そうした店まで切り捨てなければならないほど、小売業界の未来に不安が広がっていることを、今回のリストラは示している。

 もう1つの注目点は、小売業界の勝ち組として拡大を続けてきたセブンイレブンにも、大規模リストラの手が及んだということだ。

 実際、日本の商業不振は深刻度を増している。商業動態統計によると、今年8月まで、商業販売額は9カ月連続で前年割れになっている。もちろん、所得の低迷が消費不振の大きな理由だが、もう1つ見逃してはならない変化がある。それが、ネット市場の急拡大だ。昨年のネット通販市場は、18兆円にまで拡大している。取り扱われる商品も、書籍や家電製品だけでなく、日用品や食料品にまで広がっている。当然、スーパーやコンビニの市場を侵食することになる。大都市中心部に限られているが、ウーバーイーツの料理宅配も広がっている。消費者は、コンビニやファストフード店に出かけることさえ、しなくなってきているのだ。

 こうした消費行動の変化は、2つの深刻な影響をもたらすと、私は考えている。1つは日本経済の疲弊だ。

 例えば、アマゾンで買い物をすると、その利益の大部分が「システム使用料」として海外に持ち出され、さらに日本に支店を持たないため法人税も支払わない。ウーバーの仕組みも基本的に同じだ。そうなれば、日本経済は確実に疲弊する。

 もう1つの影響は、労働者の疲弊だ。アマゾンの倉庫で働くアルバイトは、商品をピックアップする時間を端末に指示され、それを守るために必死で働く。しかし、その報酬は最低賃金に近いものだ。ウーバーの場合は、配達員は個人事業主契約で、雇用者ですらない。だから、厚生年金、雇用保険、健康保険、労災保険さえ原則として適用されない。しかも、運転に危険が伴う雨の日に限って、仕事が増えるのだ。

 こうした消費市場の構造変化が、本当に望ましい未来だと言えるのだろうか。
「買い物や食事くらい、体を動かせ」と思ってしまうのは、私が前世紀の人間だからなのだろうか。

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