新緑まばゆい淀のステイヤー決戦を前に、手塩にかけて育ててきたアルナスラインを送り出す平野厩務員は凛とした表情で胸を張った。
大器、大器と呼ばれながらも、重賞にようやく手が届いたのがデビュー16戦目の日経賞。その山あり谷ありの険しい道のりの元凶となったのは3歳春、すみれS圧勝後に判明した骨折だった。悪夢はさらに続く。復帰が見えた夏後半に馬インフルエンザが流行。その影響をモロに受け、秋は京都大賞典から中1週で菊花賞という3歳馬としては異例のローテーションを組まざるを得なくなった。
そんな苦境にも(3)(2)着と一応の結果は残した同馬。だが、飛躍を期した4歳時、今度は古傷の周囲に骨膜炎を発症するアクシデントに見舞われ、脚元と相談しながら調教を積む日々。毎回、上位人気に支持される一方で、成績は尻すぼみしていった。
そこで、陣営は今年1月のAJCC6着後、放牧に出すことを決断。これが功を奏し、悩まされ続けてきた脚元の不安がすっかり解消した。合わせて前走から装着しているチークピーシーズの効果も絶大。日経賞では、今までにないほどの集中力をもって中山2500メートルを走り切ってみせた。
「今は痛いところがなくなって、馬がすごく良くなった。チークの効きもすごい。中間は坂路で軽く(800メートル)52秒台が出るようになったからね。とにかく状態の良さはデビュー以来、最高。チークが必要ないくらい馬に闘志があるから、折り合いが重要になるレースでは発走前に外す予定でいるんだ」(平野厩務員)
アタマ差で涙をのんだ菊花賞から1年5カ月…宿敵アサクサキングスを撃破して、アルナスラインが紫紺の天皇盾を手中に収める。