アルナスラインには、悔しさだけしか残らなかった。「本当にね。この前は惜しいというか何というか、4角で前が壁になって正味1Fしか追えなかった」。松元調教師がそう振り返ったのは、5着に終わった前走の京都大賞典だ。勝ったトーホウアランはアルナスとは対照的に内からするすると抜け出した。それをゴール前はよく追い詰めていただけに、やりきれない結末となった。
トレーナーがそこまで悔やむのには、大きな理由がある。アルナスの最大目標はジャパンC。しかし、今のままでは出走すら難しい。昨年の菊花賞2着などGIでも通用する能力をすでに証明しているが、意外にも重賞は未勝利。世界の舞台に立つにはどうしても勲章が必要なのだ。だから当然、今回にかける思いは並々ならぬものがある。
調整は入念。10月26日には栗東坂路で800メートル57秒5、さらに同29日には800メートル54秒8→39秒9→13秒2をマークした。馬場状態がいまひとつのため、時計は平凡だが、29日は3頭併せでしっかり実戦モードを促した。そして、昨2日にも56秒9、ラスト1F12秒9と意欲的に追われた。休み明けだった前走より、体調は確実に上向いているようだ。
「ああいう競馬だったからダメージが少なかったし、一生懸命走るタイプの割にレース後の疲労が早く抜けてくれた」。リベンジへ向け、ここまで青写真通りにトレーニングは進んでいる。
ジャパンCをこの秋の目標に据えたように、陣営は東京コースにはかなりの自信を持っている。実際、好時計で圧勝した春のメトロポリタンSに加え、目黒記念で2着もある。
「目黒の時は直線で内にササる場面があったけど、それでも2着を確保してくれた。ただそれも右ムチさえ使わないようにすれば大丈夫。今度はきっちり伸びてくると思うよ」
意気込みが違う。夢が違う。「得意の舞台で何とか賞金を加算したい」もどかしい成績とはそろそろオサラバだ。