「日ハムの首脳陣からすれば、予定通りだと思います。4月25日からの本拠地(札幌ドーム)での連戦、もしくは次に本拠地での連戦が始まる5月2日が有力視されていました」(ベテラン記者)
たしかに、5月2日からの楽天戦でベールを脱ぐ。しかし、「本拠地での一軍デビュー」が予想されていたということは、栗山英樹監督(57)以下首脳陣は黄金ルーキーにふさわしい華々しい舞台を検討していたわけだ。球界の将来を背負って立つ大物だ。そういう親心も分からなくはないが、見方を変えれば、「実力以外にも昇格させなければならない理由」があったとも解釈できる。
打者出身のプロ野球解説者がこう言う。
「木製バットの使い方が分かってきたんだと思う。金属バットで試合に出ていた高校時代よりも、バットを引く位置が深くなっていました。木製のほうが飛ばないのは当然なんですが、金属バットと同じ飛距離を求め、余計な力が入りすぎていた。木製バットでもタイミングが合えば、スタンドインするんだと分かり、スムーズにバットが出るようになった」
技術的な進歩もあったようだが、こんな指摘も聞かれた。
「今年10月、U−23の野球・国際試合が開催されます(ニカラグア)。指揮を執る稲葉篤紀監督(45)は、プロアマ混成チームで戦うNPB事務局の提案を受け入れていますが、そうなると、プロ側の誰を連れて行くべきかという選手選抜が難しくなります。将来性、かといって、一軍経験の少ない23歳以下ではアマチュア側にナメられてしまう。厄介なのは、その国際大会の日程ですよ。プロ野球はクライマックスシリーズ、日本シリーズの真っ最中なんです」(球界関係者)
東京五輪にもつながる国際大会とはいえ、完全な一軍戦力となっている23歳以下は送り出せない。たとえばの話、プロ2年目でブレイクしたDeNAの投手・京山将弥(19)を貸してくれと稲葉監督が言ったら、ラミレス監督は「ちょっと待ってくれ」となるだろう。巨人も今年22歳になる岡本和真の選出を迫られたら、「戦力ダウンだ!」と怒るはずだ。そこで、清宮が急浮上してきたというわけだ。
「今季は一軍のスピードに適応できれば、来季以降ブレイクすると日ハム首脳陣は踏んでいます。国際試合を経験させるのも将来のため、現時点で清宮には一軍のレギュラー選手を弾き出すまでの力はありません。かといって、プロアマ混合チームに一軍経験のない選手を出すのは、アマチュア野球の要人に対し、失礼だし…」(前出・同)
今回の一軍昇格は“箔付け”でもあるようだ。もっとも、日ハムがこのままクライマックスシリーズに進出し、清宮が戦力になっていれば、国際試合選出を躊躇うだろう。一軍経験、あるいは戦力としてアテにされ、選出辞退のどちらに転んでも、清宮の箔付けになるのは間違いない。
「チームは北広島市に本拠地を移転させることをすでに発表しています。当初はガッカリする札幌市民の声ばかりでしたが、昨今では、『札幌市と北広島で見積もり合戦をさせた』と批判的な意見も伝えられています」(地元メディア)
好感度の高い清宮を札幌でデビューさせることにも、それなりの意味があったらしい。ベンチ裏では「オトナの都合」ばかりが聞こえてくるが、ホームランを狙って打てる10代は稀少だ。雑音の聞こえないところで、大きく育ててもらいたい。