馬場や距離、そんな細かい条件は本当に強い馬には関係ない。松田国師はそう言いたげだ。
「クッション的には芝の方がいいかもしれない。だけど兄のダイワメジャーと違って、動きが軽くしなやか。それにスピードの乗りがすごく速くて、ダートでも間違いなく前に行ける。苦にすることはないでしょう」
昨年、芝の3歳女王に輝き、暮れの有馬記念でも2着に大健闘した。ダイワスカーレットにとって、初のダート、それが猛者の集まるGIというのは常識破りの選択のようだが、名トレーナーには確固たる自信と確信があったのだ。
そこまでの強い思いを師に植えつけたのは前走の有馬記念だった。「もっと大きく負けてもおかしくなかった」と振り返る激戦。初めて牡馬の古馬に挑戦、馬場はパワーのいる状態で、それまでほとんどラストは3F33秒台で上がってきたスカーレットが36秒6もかかる苦しい流れだった。
「崩れなかったのは本当に評価できる」同期のライバル、ダービー馬のウオッカが11着に大敗したタフなレース。それを2着に踏ん張ったのだから、軽快なスピードだけではない、本物の底力を示した。
中間は5日にフレグモーネを発症してしまったが、「9日から坂路に入っているし、影響はない」と言い切った。
その言葉を裏付けるように14日の1週前追い切りは豪快だった。栗東坂路で安藤勝騎手が騎乗して800m51秒2→37秒4→25秒2→12秒9の好タイムをマークした。その日は非常に力のいる馬場状態、それを攻め駆けするダイワチャームと馬なりで併入したのだから、仕上がりに不安はないだろう。
「昨春よりどっしりして大人になった。間隔はあいたけど、今は精神面で余裕があるので大丈夫。レースは自然と砂を被らない前で流れに乗れると思うけど、仮に砂を被ってもむしろ折り合いがついていいかもしれない」
真冬の砂煙の先に見えるのは砂漠の中に浮かぶ夢の舞台。芝とダートの統一女王の座を手中に収め、世界に踏み出すつもりだ。