「レイズは資金力がある球団ではありません。メジャーリーグは通常、5人の先発投手を中4日で回します。力のある先発投手を5人そろえられなかったため、救援タイプの投手を先発させたんです。先発投手も序盤戦に失点する傾向があるので、初回を救援投手でゼロに抑えてもらえば、試合の主導権を握ることもできます」(米国人ライター)
レイズはこの戦略で90勝72敗と好成績を残した。模倣する米他球団も現れたほどだ。
「今季序盤、日本ハムも模倣し、斎藤佑樹、加藤貴之にオープナーを任せましたが、チームを活気づけるまでには至りませんでした」(プロ野球解説者)
オープナーに対し、日本の各球団は“様子見”といったところ。しかし、レイズはこのオープナーに関する“研究”を進めていた。今季もこの継投策で順調に勝ち星を重ねており、日本球界もオープナーに適した救援投手の見極め方が分かり次第、導入するのではないだろうか。
「昨季、オープナーで快進撃を見せましたが、レイズの投手陣は批判的でした。投手、ブルペン担当のコーチが説得したんです。彼らがようやく前向きになれたころには、シーズンが終了していました」(前出・同)
2019年もオープナーの作戦を用いている。しかし、昨季と異なる点がいくつかある。オープナーを託せるタイプとそうではないタイプに救援投手を分けたのだ。
「オープナーを任されることが最も多いのは、ライン・スタネックという右投手です。彼は昨季、最初のオープナーを任されたピッチャーでもあります」(特派記者)
スタネックは今季、すでに10回以上もオープナーを任されている。聞けば、このスタネックは最速160キロを誇る速球派だが、過去にさほど好成績は残していない。オープナーを託されてから注目されるようになったと言っていい。
「今季の防御率を見ても分かる通り、オープナーの時は1点台、本職のリリーフ、つまり、試合後半で出てきたときは4点台。スタネックは速球で押していくタイプですが、ホームランを献上することも多く、そのためにリリーバーとしての評価が高くなかったんです」(前出・米国人ライター)
スタネックがオープナーで打者一巡に投げた後、登板することが多かったのが新人やメジャーでの経験が少ない投手。新人や経験が浅い先発しかいないところに“資金難”のチーム事情が表れている。オープナーはこうしたイマイチな先発投手を生かす作戦でもあるのだが、今季はその役目を、三振を狙いに行けるリリーバーに制限しつつある。
「2番手で投げる本来の先発投手とは真逆なタイプとも解釈できます」(前出・同)
また、レイズはフロントでデータ分析担当だった人物に「プロセス アンド アナリティクスコーチ」の肩書を与え、今季からベンチ入りさせている。打撃、投手、バッテリーなどのコーチはいるものの、「ナンダ、それ!?」と聞きたくなるような肩書だ。他チームにそんなコーチはいない。ベンチ内でデータ分析を即座に行い、監督に分析結果を提供しているそうだ。
「日本ハムがオープナーで斎藤佑樹をテストしましたが、結果に結びつきませんでした。レイズは三振が狙えるタイプにオープナー役を限定していますが、斎藤はそのタイプではありません」(前出・プロ野球解説者)
レイズのチーム事情では、「オープナー=三振狙い」。本来の先発投手と真逆のタイプに限定すべきという、ひとつの仮説ができつつあるようだ。スポーツは感情が大きく左右するもの。数字が全てではないが、日本のプロ野球チームもオープナーを模倣するならば、レイズのように2番手で投げる本来の先発投手のことを考えた人選にしなければならないだろう。
(スポーツライター・飯山満)