アメリカから伝えられたショッキングなニュースだったのが、WBC2大会連続MVPの栄誉に輝いた松坂の先発3番手降格。しかし、松坂は覚悟していたフシがある。スポーツ紙記者の話。
「球数を厳しく制限されていたのに、松坂はキャッチボールに見せかけるなど、隠れるようにして投げ込んでいた。それをわれわれ、日本のマスコミが書いたのですから、球団サイドに伝わらないはずがない。3番手は言ってみればペナルティ。個人主義の国だけに逆らえばどうなるかを、チームメートに示さなければならない。松坂は日の丸のためなら、それでもいいと腹をくくっていたでしょう」
WBCの主催者は、米メジャーを統括するMLB。だから、投手に関しては球数制限や登板間隔など厳しい制約があった。投手の肩を消耗品と考える大リーグならでは。そこに、長嶋茂雄氏が言うような“フォー・ザ・フラッグ”はない。
さて、日本球団所属の侍戦士はどうか。球界OBが言う。
「レギュラーシーズンが終了すれば一端、体を緩めるのがプロ野球選手。いわゆるオフにクールダウン、体の手入れをして自主トレ、キャンプ、オープン戦を経て次のシーズンを迎えることになる。メジャーリーガーもそうだが、侍ジャパンのメンバーにはオフがなかったに等しい。ずーっと、緊張しっぱなし。シーズンのどこかで、金属ならぬ“勤続疲労”が出て、なんら不思議のない状態にあるといっていい」
WBCの試合中に故障でリタイアを余儀なくされたのが横浜ベイスターズの主砲、村田修一。阪神の岩田稔投手は凱旋帰国後、左肩痛に襲われた。この2人の戦列復帰は、早くて5月中旬になると見られている。
そして、筋肉痛と発熱で予定オープン戦を2試合連続欠場したのが、その大活躍でポストイチローとしてメジャースカウトから絶賛されたヤクルトの青木宣親(27)。幸い、休養すれば開幕戦に出場できそうだが、周囲をヒヤリとさせた。
「野手は実戦を積むにつれて感覚は戻ってくるから心配はない。まずは故障したところを治すのが先決。焦らないことです」(前出・OB)
ところで、開幕投手としてマウンドで対決することになったダルビッシュと岩隈も、WBCの後遺症がなかったわけではない。ダルはオープン戦の登板時にマウンドの柔らかさに戸惑った。そして、岩隈は調整登板なし、ぶっつけで本番に臨むことになった。先のスポーツ紙記者が言う。
「2人とも、万全の状態ではないことが図らずも明らかになった。本業の先発に加えて中継ぎ、抑えでも投げたのは、経験になったかと言えばそうとも言えない。精神的な疲労がシーズンのどこかで出ない保証はないからだ。とくに岩隈がそう。野村監督の口から『WBCのせいで…』みたいなボヤキがでなければいいのですが…」
3日後、2人の対決はどんな結末になるのか。