V5戦を前にチャンピオン側が大ポカをやらかした。
試合直前になっての興行中止。混乱を招いた騒動のてん末はこうだ。
宮田博行会長はスタッフとともに昨年9月ごろから隔週ごとに週末を利用し、水面下で中国を訪問していた。中国の市場開拓を目指すWBCとの思惑が一致し、タイトルマッチの開催を検討。12月に4度目の防衛に成功すると、実現に向けて交渉を本格化していった。
だが、上海・盧湾体育館での防衛戦に踏み切ったことで、トラブルに巻き込まれた。
当初は中国側が興行権を持つはずだったが、不況のご時世でスポンサーが次々と撤退。権利が宮田ジムに譲渡され、現地のイベント会社に委託していた。
問題が発覚したのは、21日に宮田ジムとJBCのスタッフが現地入りしてから。宮田会長によれば、北京の国家体育総局の許可が下りておらず、内藤陣営は22日に同局に直談判。交渉の末、なんとか同局からは中国での興行許可を取りつけたが、さらに上海市同局の許可も取得しなければならず、事務処理が終了するのは早くても25日になってしまうため、会場設営などの問題から中国での開催を断念したという。
この日、宮田会長は都内で緊急会見を開き、「関係者の皆さまには多大なるご迷惑をおかけした。監督不行き届きがあったのは事実です」と謝罪。会見中に6度も頭を下げた。
本来なら興行中止もやむを得ない状況だが、内藤の試合をテレビの前で心待ちにしているファンや関係者、内藤のモチベーションにも影響することもあり、都内での代替開催をWBCが承認。JBCの規定により、日本でのボクシング興行は、全試合合計で32R以上50R以下で行うのが原則となっているが超法規的措置として特例が認められ、タイトルマッチ1試合のみでの開催となった。
入場券は当日券のみで、中国に観戦に行く予定だったファンは「最優先で招待する」(宮田会長)という。
どうしてこんな不測の事態を招いたのか。石井孝マネージャーは「イベント会社に任せていて、どんな書類が必要かわからなかった。我々も確認しなかったのがいけなかった」と背景には第三者への“丸投げ”があったことを認めた。中国でプロモーターを務めるはずだったイベント会社については「浜崎あゆみのコンサートとか、芸能関係の仕事はやったことがあると言ってました。ボクシング? ちょっと分からないですね」(宮田会長)とボクシングの興行に関しては素人同然という驚がくの事実も発覚した。
さらに挑戦者・熊朝忠のトレーナー兼プロモーターを務める劉剛氏は「宮田会長に、今回のイベント会社を紹介したのは私です」と明かしている。
3人の話を総合すると、中国当局、内藤陣営、イベント会社と3者間に複雑な“三角関係”が築かれていることが分かる。その結果、3者の間で興行権がたらい回しにされている実態があるのも事実だ。
「日中友好と巨大市場開拓の先行投資。まだまだ中国で開催するという夢を捨ててはいません」と語った宮田会長。未開の地を開拓するためには、多くの課題が山積みだ。