マーリンズが成績不振を理由にフレディ・ゴンザレス監督を解任したのは23日。フロントの動きは早く、バレンタイン氏を含む数人を新監督候補に挙げ、即座に交渉を開始した。
「メジャーは『勝てない』とオーナーが判断した時点で、指揮官をクビにしますからね。シーズン前半での監督解任、交代は珍しいことではありません」(米特派員の1人)
しかし、バレンタイン氏とマーリンズの交渉決裂は意外だった。マーリンズのオーナー、ジェフリー・ロリア氏とは20年来の友人なのである。昨季まで在籍していた千葉ロッテの関係者によれば、
「オリオールズもマーリンズに先駆け、監督をクビにしています。オリオールズもボビーを監督候補に挙げ交渉しましたが、ロリア氏から監督交代の動きを内々に聞かされ、オリオールズとの交渉を打ち切ったんです」
とのこと。監督志望の強い同氏がオリオールズに対し、「興味がない!」とまで言ってのけたのは、マーリンズ指揮官着任の布石だったのである。
「マーリンズはボビーに4年契約を提示したようです。年俸までは分かりませんが、重光(武雄)オーナーにも連絡を入れたと聞いていましたので、これは本決まりだなと思っていたんですが…」(前出・同)
ロリアオーナーは全米屈指の画商でもある。バレンタイン氏とは気心の知れた仲だけに、今回の交渉決裂のナゾは深まるばかりだ。
また、この一報が伝えられた27日、同氏は解説を務める米スポーツ専門局ESPNの番組に出演し、「(交渉破談は)初耳だ。まだ交渉は続いていると…」とコメントしている。
「ボビーは、千葉ロッテでは年俸5億円とも6億円とも言われた人ですよ。メジャー監督の年俸は50万ドルの人もいれば、700万ドルの人もいます。かなり『格差』がありますが、平均で156万ドルと言われています(約1億6000万円)。マーリンズの経営収益はさほど高くないとも聞いていますので、破談報道はロリアオーナーとの駆け引きの一環だと思います」(プロ野球解説者)
20年来の友人と、お金の駆け引きをするとは…。しかし、こんな声も聞かれた。
「ボビーは『日本球界通』で全米から認知されています。ダルビッシュなど有望日本人選手との今後の交渉、それに付随するジャパンマネーなどを考えれば、ボビーに大金を払う価値はあると思う」(前出・米特派員)
バレンタイン氏には統計アナリスト、データマン、戦略スタッフなど複数の野球ブレーンがいる。千葉ロッテも同監督の帰還交渉を進めたとき、スタッフ全員の雇用を認めなければならなかった。「お金の掛かる指揮官」と称されるのはそのためだが、旧知の千葉ロッテ関係者は、マーリンズとの交渉決裂の一報を見て、意味シンな笑みを浮かべていた。