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【甦るリング】第8回・寡黙で硬派だった川田利明がエンターテイナーに大変貌した驚がく

 川田利明…“全日四天王”と称され、三沢光晴、小橋建太、田上明とともに、全日本プロレスで一時代を築いた伝説のプロレスラーである。現在は、東京都世田谷区に飲食店「麺ジャラスK」を開店したこともあり、プロレス活動は休止状態となっている。

 全日本時代の川田の印象は、とにかく寡黙で硬派。とはいえ、無口というわけでは決してなく、あまり試合のことを口でしゃべりたがらないタイプ。ジャイアント馬場が嫌ったこともあるが、リング上でマイクアピールをすることもほとんどない。従って、記者としては、非情に原稿が書きづらい選手であった。その反面、時として、試合後、冗舌になって、立て板に水のごとくコメントすることもあった。そんな時は、原稿を書くのもスラスラとはかどったものだ。リング上のイメージと反するが、川田は大のお笑い好きで、ダチョウ倶楽部とも親交があり、タレント活動する際は太田プロダクションの所属となっている。

 そんな寡黙で硬派の川田が、エンターテインメント性を追求したプロレス団体・ハッスルに身を投じ、まさしくエンターテイナーに大変貌を遂げたのには正直驚きを隠せなかった。ハッスル参戦に至るまで、紆余曲折があった。99年1月に馬場が亡くなると、全日本では三沢が社長、川田が副社長を務めていたが、三沢と馬場元子夫人との意見が対立。三沢ら大半の選手が00年6月に離脱し、プロレスリング・ノア設立に動いた。残されたフル参戦の日本人選手は、川田とベテランの渕正信の2人だけだった。

 全日本は川田らが新日本プロレスとの対抗戦などに活路を見出していたが、02年9月に元子夫人から、元新日本の武藤敬司に禅譲された。川田は参戦を続けたが、05年3月に無所属を宣言した。馬場の死後、正式な契約は交わしておらず、事実上フリーの状態だった。後に川田は当時、長期間に渡って、ギャラが支払われていなかったことを明かしている。その後、全日本への参戦も続けたが、主戦場はハッスルに移す。それは好んで、そうしたわけではなく、食っていくための選択だったようだ。ハッスルではハッスルK、モンスターKとして、エンターテインメント・プロレスにまい進する。

 ふだんはガチガチのハードな試合を展開する川田だが、ハッスルではタレントのインリン様(インリン・オブ・ジョイトイ)や、大食い王のジャイアント白田を始め、タレントとの絡みも多く、歌や踊りを披露するなど、硬派な川田しか知らないファンをあ然とさせたものだ。私自身も、「何が川田をこうさせたのか?」と驚くしかなかった。

 「ポリシーを変えてほしくない」と思ったりもしたものだが、今思えば、当時の川田にとっては、エンターテインメントをまっとうするのが仕事であり、生きていくためにはやむを得ないことだったのだろう。

 そんな川田に相次いで、ショッキングなことが起きる。09年6月、足利工業大学附属高校レスリング部の1年先輩である三沢が、リング禍により死去。川田は三沢の後を追って全日本入りし、ずっと三沢の後ろ姿を見続けていた。不幸にして、上がるリングは変わったが、05年7月18日、ノア初の東京ドーム大会では、シングルマッチで三沢と対戦。その後、三沢存命時に再びノアのリングに上がることはなかったが、川田自身は再戦を熱望していたのだ。

 川田にとって、立場が変わっても、ずっと目標であった三沢が亡くなったことで、プロレスを続けるモチベーションに変化があったのは確かのようだ。さらに、主戦場のハッスルは09年10月に事実上の活動停止に陥る。

 転機となった川田は10年6月、世田谷区に飲食店「麺ジャラスK」を開店。オープン当初はプロレス活動もしており、三沢没後のノアのリングにも上がったが、同年後半からはフェードアウトし、店の経営に専念。ふたつのことを同時にこなすのが苦手で、ひとつのことに集中するタイプの川田は、店を軌道に乗せるために汗を流し、トレーニングをする暇もなく激ヤセしてしまった。今ではリングに上がれるようなコンディションではない。なお、同店はラーメン屋と思われがちだが、川田曰く居酒屋。客には唐揚げなどのつまみで酒を飲み、締めでラーメンを食べてもらうのが理想だという。

 現在51歳の川田。このままプロレスラーとしては終わってしまうのか? 中途半端なことはしない性分なだけに、ちょっとやそっとのことでリングに上がることはないだろうが、いつか、もう1度、“デンジャラスK”の勇姿をリング上で見たいものである。

(ミカエル・コバタ=毎週水曜日に掲載)

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