19日にイチローが「WBC監督は現役監督がふさわしい」と発言してから、わずか1週間で決着した。現役大リーガーの影響力は、爆弾にも等しいほど強力だったことになる。スポーツ紙デスクが振り返る。
「イチローにはWBCの監督問題について、相当の情報を耳に入れていたのは間違いない。WBCに懸ける情熱は常々、口にしているように誰にも負けないと自負しているからです。それなのに発言を控えているうちに、星野氏の北京五輪に続く継投が既定の事実になりつつあった。それが我慢できず、あの発言になったのだと思います」
25日には極秘帰国。おそらく、王コミッショナー特別顧問から原監督に決定する前に、その旨の説明はなされていた可能性がある。
「王氏から説明されれば納得できるし、原監督なら異論があろうはずがない。イチローが全面協力を約束したから、きのうの発表になったと見ていい」(前出・デスク)
11月1日から日本シリーズが始まる。巨人ー西武の首都圏決戦。球界関係者が集まるだけに、WBCのチーム編成など今後のことを話し合うのも好都合だ。その輪の中に、イチローがいてもおかしくはない。
そこでテーマになるのは、まず原ジャパンの組閣メンバー。原監督は日本シリーズで手一杯だが、入閣候補の名前はすでに浮上している。球界OBが解説する。
「原は人間関係を大事にする男。02年、最初の巨人監督のときのコーチの多くを、再び起用していることでそれが分かる。あのときは、わずか3年で解任。申し訳なかったという気持ちと気心が知れているからだよ」
篠塚和典打撃コーチ、斎藤雅樹投手コーチ、吉村禎章2軍監督らが、横滑り組だ。WBCもこの体制で臨みたいところだが、そうはいかない。
WBCと巨人のキャンプが重なるためだ。そこでWBCのコーチ候補に名前があげられているのが、現在の原巨人に入閣していない元コーチ。鹿取義隆氏と鈴木康友氏だ。
「鹿取氏は報知新聞評論家、鈴木氏は地域リーグ、富山サンダーバーズ監督が今の肩書き。原監督から声がかかれば、おそらく二つ返事でしょう」(前出・デスク)
ちなみに鹿取氏は、第1回WBCの投手コーチを務めている。投手陣の中心的存在になる松坂大輔に異論があろうはずもない。危惧されるのは、星野氏が北京五輪で批判を浴びた“仲良し内閣”の二の舞だが…。
「原は周囲に気を使える、人の話を聞くことができる。ワンマンになることは、まずない。心配ならひとりかふたり、原派ではない人物を入れれば解決する」(前出・巨人OB)
巨人サイドから来季の続投を、まだ確約されていない原監督。日本一になれば決定だろうが、さらにはWBCの優勝監督になったとき、なんと言うのか。
なお、加藤コミッショナーはきょう午前、読売新聞本社に巨人滝鼻オーナーを訪ね、原監督のWBC監督就任を正式に要請した。
○選手選考アンケート
原ジャパンのコーチ、選手の選考は日本シリーズが終わり次第になる。12球団の選手選考アンケートは、楽天、ロッテ、中日を除く9球団から約60選手が提出されている。
加藤コミッショナーは当面は公表しないとしながらも、「(原監督には)価値のある参考資料になるのでは」といい、各球団が主力選手をリストアップしていることを示唆している。
日ハム梨田監督はダルビッシュ投手について、「選ばれるのは当然のこと。起用法は監督に任せる」と話している。ダルビッシュが選考されれば、アンケート未提出の3球団も原監督の要請があれば従うことに異論はない。雨降って地固まる、のたとえではないが、WBC2連覇に向けて球界あげての協力体制が整うのは確実だ。