ドライチルーキー・藤岡貴裕(22=東洋大)は前評判通りの好左腕だった。
昨年の秋季リーグ戦は怪我を抱えての登板だったが、その頃とは比べものにならないほど、球速、威力のあるストレートを投げていた。カーブ、スライダー、フォークなど変化球が多彩なのもドラフト当時から伝えられていたが、現地入りしたプロ野球解説者も、「2ケタは確実に計算できる」と太鼓判を押していた。その根拠は“ストレートの軌道”にあるという。
「ボールを放すリリーフポイントとキャッチャーミットを1本の線で結ぶイメージで見てほしいんですが、藤岡のストレートは高低に外れることはあっても、ボールはそのライン上から左右に大きく脱線することがないんです。右打者の内角を攻める際、かなりの効果が期待できます」(同)
ドラフト2位の中後悠平(22=近大)にもビックリさせられた。彼には失礼かもしれないが、大学時代の武器は『荒れ球』であり、プロでは「制球難に苦しむ」と思っていた。サイド、スリークオーター、アンダーと投げ分けていたのは変わらなかったが、コントロールが良くなっていた。サイドスローで投げるときは若干の「ばらつき」も多少見られたが、スリークオーターでの投球は、ストライク・ゾーンで適度に荒れているといった感じだった。打者はかなり打ちにくい印象を抱くはずであり、中後も西村徳文監督の構想に入っているのではないだろうか。
3人目は前巨人・グライシンガー(36)だ。メスを入れた右肘が癒えたのだろう。前年とは比べものにならないほど、右腕が強く振られていた。巨人時代と比べ、直球は遅くなった。変化球のキレに関しては判断できなかった。ヤクルト、巨人時代から「広い球場だと本領を発揮する投手」とも言われてきた。その点では、札幌、仙台、福岡と広域球場を本拠地とするチームも多く、パ・リーグは合っているのかしれない。本人は完全復活を目指しているだろうが、「前半戦だけでも」、もしくは「ローテーションの谷間」を埋めることができれば、投手陣のやり繰りは楽になる。
野手では巨人から帰還したサブローがキーマンになるだろう。「一塁守備の用意をしている」との情報はキャッチしていたが、キャンプの守備練習では、外野の練習しかやっていなかった(中盤以降)。
サブローはレギュラーが約束されてはいなかった。指名打者を争う場合、前ヤクルト・ホワイトセルがライバルとなり、一塁には福浦和也がいる。外野では、岡田、伊志嶺、清田、角中とも勝負しなければならない。右打者のサブローと左打者のホワイトセルを使い分ける構想なのか…。ホワイトセルがフリー打撃でも湿りがちだったのは気掛かりだが、左の大砲タイプなら、大松もいる。サブローはマイペース調整といった感だったが、今季は彼がキーマンになるのではないだろうか。 千葉ロッテは「ノセると怖いチーム」であるが、何か1つのことにつまづくと、全員が下を向いてしまう弱点もある。長いペナントレースのなかでは色々なことが起きる。チーム全体が沈みがちなとき、頼りになるのはベテランだ。ペナントレース序盤は藤岡、中後で、交流戦を迎えた時期からサブローを始めとするレギュラー陣が本領を発揮していくという流れになれば理想的である。
連日、居残り練習でバットを振っていた選手がいた(キャンプ後半)。背番号「35」。新人内野手の鈴木大地(22=右投左打・内野手)だ。藤岡と同じ東洋大学の出身でありながら、「ドライチと下位指名の差」に発奮したのだろう。守備も巧い。ひょっとしたら、レギュラー不在の遊撃手争いで、ダークホースとして浮上してくるかもしれない。井口は今年、38歳。今江は29歳、福浦は37歳になる。外野では清田、岡田などの若手が頭角を現しているだけに、鈴木を始めとする若い内野手の出現にも期待したい。