今回ご紹介するのは今年より事務所の本棚に置かれている「鬼の像」の話である。
写真を見てほしい。この「鬼の像」は立派な角が2本生えている誰しもが想像しやすい鬼の形をしているが、丸い目玉とぽっかりと空いた口が印象的であり、その表情は何かこの世に対し深い恨みを持っているようにも見える。
色は明るい茶色でところどころ白くなっている部分があり一見すると石のように見えるが木製であり、左腕の肘からはもぎとたれたような跡があり、誰かに補修されたような痕跡も残っている。果たして、この像は何なのか。
これは、山口敏太郎が約2年前、成田山の古道具屋で購入したものである。値段は2万円であり、箱書きには京焼の幕末三名人と称される彫刻家青木木米(あおきもくべい)の号である「古器観」「木米」が記されている。
骨董品屋の店主も「これは青木木米の作品である」と説明はしていたが存在する木米の作品とはタッチが微妙に違い、箱書の文字もインクで書かれたであろう跡がくっきりと残っており実際に彼の手によるものかどうかはかなり怪しい。憂いを帯びた表情と鬼という造形から察するに、これは個人が何者かに恨みを持って作られた呪術の道具ではないかと推測される。
この鬼の像は長らく山口敏太郎事務所の某支部に保存されていたものだが、今年に入り本部へ移管されてきた。その移動の際、この像には不思議な事が起こっている。
なんと、像が勝手に箱から出てきて本棚に収まっていたというのだ。移管に立ち会ったスタッフのひとりが語るところによると、この像は他の荷物と一緒に事務所に運ばれてきたのだが、開封した際には全く気がつかず、他の荷物がすべて収納された時点で本棚にいる「鬼の像」に気がついたのだという。
(写真:青木木米作とされる「鬼の像」)
(山口敏太郎事務所)