同大では入学と同時に4つの大隊に分けられる。開校祭も各隊中心。11月7〜8日に開催された同祭のテーマは、「威風堂堂」。他大学とはひと味違う荘厳なテーマだ。事情通によると、「注目は学生による観閲式と棒倒し」という。
観閲式では学生の凛とした所作に観客はじっと見入る。「草食系男子」と呼ばれる最近の若者とは180度異なる姿に、「ほんと、カッコいい」とうっとりする女子高生がいた。
自衛隊行事では、おなじみのアクロバット飛行を行うブルーインパルスの展示飛行や習志野第一空挺団のパラシュート着陸披露などもあり、会場を盛り上げた。
しかし、やはり最大の見どころは伝統の「棒倒し」だった。中学時代などにやったそれと一緒にしてはいけない。各大隊ごとに選抜された100人でチーム編成。総長の下、敵陣に攻め込む攻撃局、守備を担当する防御局、作戦を考える参謀局、他大隊の情報を分析する情報局が置かれ、実戦さながらの超本格的バトルが繰り広げられる。
「勝つと負けるとでは大隊の雰囲気が全然変わってきますね」(防大3回生)とのこと。
隊の名誉をかけた真剣勝負のため、いくら詳しい作戦を聞こうとしても「それは秘密ですって」(防大4回生)と極秘事項扱いで教えてくれなかった。
各隊校舎には「団結」などの勇ましいスローガンや必勝を期したフレーズが張られている。開始前からチームごとに集まり、気勢を上げる声が聞こえたら臨戦態勢。会場に駆け足で入場し、連呼による人数確認が終わると100対100の迫力ある棒倒しが開戦した。
Tシャツが引きちぎられるなどは当たり前。迫力満点の戦いに観客から熱い声援が飛ぶ。「これを毎年見ていると元気をもらえて寿命が伸びるよ」と70代の男性はうれしそうに話す。
今年の注目は、敵なしの第二大隊が前人未到の5連覇を成し遂げるかどうか。これを阻止して優勝したのは第一大隊。その喜びようは半端ではなく、校内を気勢を上げながら練り歩き、第一大隊宿舎前で「ビールかけ」ならぬ「コーラかけ」で喜びを爆発させた。
もちろん棒倒しだけではない。「焼きそば」「肉まん」などの模擬店もある。インドネシアやタイからの留学生はお国自慢の名物料理を出品。国際化する防衛大の一端を垣間見ることができた。
体育館では文化部の発表があった。防衛学研究会の展示テーマは「革命30周年のイラン」。模型研究会では学生が軍事マニアを相手に「対空ミサイルの今後」について話し込んでいた。さすが防大生。さらに「親孝行フェア」と銘打ち、親元を離れて寮生活を送る学生の感謝の手紙が展示されていた。
ステージでは、ヒップホップダンスや軽い下ネタも入れたユニークなダンスを行う謎の集団「TSO」がパフォーマンスを披露した。
防衛大はありふれた大学祭とは明らかに一線を画している。未来の国防を担う学生は、真剣でまじめで純粋で、ちょっとだけ今風。礼儀正しくハキハキしていて、気持ちのいい若者が多かった。
◎防衛大学校とは
幹部自衛官となるべき人材を教育訓練する防衛省管轄の機関。一般大学ではないが、「大学の学部に相当する教育課程」として認定され、文部科学省所管の大学と同様、卒業すれば「学士」の学位が授与される。入学1次試験は3教科の学力試験。旧帝大程度の難易度というから相当の学力が必要。2次試験では身長・体重・視力・尿検査等の身体検査が科される。採用後は被服も支給され、給与も月額約11万円の学生手当と年2回の期末手当(賞与)年額約38万円がある。理工学専攻と人文・社会科学専攻があり、授業では学業以外にも厳しい訓練がある。所在地は神奈川県横須賀市走水1-10-20。京急馬堀海岸駅下車、徒歩約25分。