侍ジャパンの監督を巡ってすったもんだした球界だが、10月10日、元広島監督の山本浩二氏の就任が正式に決まった。話をややこしくしたのは、加藤良三コミッショナーの特別顧問を務める王貞治ソフトバンク球団会長が、自前の秋山幸二監督起用にこだわり続けたからだという。
福岡の地元放送関係者が舞台裏を明かす。
「日本、中国、キューバらによるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の第1次ラウンドが福岡ヤフードームに決まったことが背景にあるのは確かです。王会長にすれば、興行的にもメンツの面でも秋山監督に指揮を執らせたかったのでしょう。しかし、自前の監督にこだわったのはそんな単純な構図だけではない。今大会には8年あまり温めてきた孫正義オーナーのワールドワイドな構想が潜んでいるのです」
孫オーナーは2004年に球団を買収した際、「将来、大リーグのワールドチャンピオンと日本一球団の“リアル・ワールドシリーズ”を実施したい」との遠大な構想をぶち上げ、度肝を抜いた。昨季の日本一を背景にいよいよ実現に動き出したのである。
究極的な目標はリアル・ワールドシリーズの実現だが、布石にしようとしているのが、公式戦での日本プロ野球とMLBとの交流戦実施。シーズン中にMLBのチームが日本に来る、もしくは日本のチームが渡米してMLBチームと対戦ということになれば、欧州サッカーに奪われつつあるスポーツファンを呼び戻すことができる。
ネックになるのは日米間の距離と時差。公式戦で交流するのは無理がある、というのがこれまでの定説だった。しかし、複数のチームが一緒に来日し、複数のカードを組むことで問題は解決するのでは、という流れができつつある。
大手広告代理店関係者によれば、すでにテストは始まっているという。
「今年3月にはイチローがいたマリナーズとアスレチックスが来日し、東京ドームでMLBの日本開幕戦を開催した。見逃せないのはその際に両チームが巨人、阪神と交互にオープン戦を実施したことです。単独チームでの来日では1カード3試合しか出来ませんが、2チームなら2カード6試合が組める。3チームなら3カード9試合。ドーム球場を使用すれば、雨天中止の心配もない。1度の来日でそれだけの試合をこなせれば、日米の交流戦が十分に可能なわけで、一次的な問題はクリアできるのです」