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不肖の親ルノーと別れられない… 日産自動車の深刻な焦燥感

 日産自動車の命運を握りかねない問題が浮上した。フランスのルノーと資本関係の見直しに向け協議に入ったのだ。
 フランス現地メディアはともかく、日本での扱いは総じて地味だが、市場関係者はこう言い放つ。
 「確かに資本関係ウンヌンは聞き心地の悪くない話ですが、野心満々のカルロス・ゴーン日産社長(ルノーCEO兼務)は保身のためならば何でもする。これぞルノーによる“日産植民地化”の総仕上げに直結しかねません」

 両社は1999年に資本提携し、ルノーが日産株の43.4%を保有する一方、日産がルノー株の15%を保有する間柄だ。今回浮上した資本見直しは、ルノーが保有する日産株を40%未満に引き下げ、日産が保有するルノー株に議決権を持たせるのが狙いである。
 日本ではなじみがないが、こんな手法を取るのはフランスの会社法による。つまり40%以上の出資を受けた企業(日産)が持つ出資先企業(ルノー)の株式には議決権が認められないのだ。

 問題はルノーが日産保有の自社株に議決権を与えようと画策する理由である。「要は筆頭株主としてルノーに影響力を行使したいフランス政府と、これを排除したいルノーのにらみ合いがある」と日産関係者は打ち明ける。
 双方の軋轢を象徴するのが、今年の4月に入ってからフランス政府が敢行したルノー株の買い増しだ。3月末時点では日産と肩を並べる15%の保有比率だった政府が約1400億円を投じて株を買いあさり、保有比率を19.7%まで高めた。これをテコに、ルノーが4月30日に開いた株主総会において真っ向勝負を挑んだ政府は、まんまと押し切ったのである。

 これには少々の説明が要る。フランス政府は昨年、2年以上保有する株主に2倍の議決権を与える『フロランジュ法』を制定した。雇用保護などを名目にしているが、情報筋の間では「ルノー狙い撃ち」が真相とされている。同社は労組問題で政府との関係がギクシャクしてきたためだ。
 ただし、この法律は総会で3分の2が反対すれば適用されない。ルノー経営陣は従来通りの「1株1議決権」を主張して政府とガチンコしたが、総会では会社側の議案が通らず、株を買い増した政府が僅差で押し切った。前出の日産関係者が続ける。
 「ルノーは来年からフランス政府の議決権が約28%に高まることに危機感を募らせている。そこで日産の保有株に議決権を与えれば強力な応援団になるだけでなく、多少なりとも政府の比率を下げられると踏んだ。そんな一石二鳥を狙ったのが、ここへ来て急浮上した資本関係見直しのキーワードなのです」

 確かにルノーのゴーンCEOが不安に駆られたのにも一理ある。株買い増しに際し、フランス政府首脳は「この分は総会の採決後に売却し、持ち株比率を再び下げる」と示唆していたが、株式は依然として保有したまま。それが例の法律に従い、来春には28%まで高まるのだ。ゴーンCEOならずとも「さては」と疑心暗鬼にならないわけがない。
 「フランス政府はゴーンCEOが将来の後継候補を次々とパージし、長期政権をもくろんでいることがルノーの将来にマイナスに働くと考えている。そこで筆頭株主としてにらみを利かせ、発言力を増すことで彼の影響力を排除するシナリオを練っている。これに対し、彼は日産を巻き込むことで政府へのけん制球を投じようとの図式なのです」

 かつてルノーは経営危機に陥った日産を支援した。しかし、今や立場は逆転し、ルノーの売上高は日産の半分以下。それどころか、今のルノーは日産からの配当金がなければ経営が成り立たないほど追い詰められている。それにもかかわらず、昨年再任されたゴーンCEOは3年後にもう一度再任されれば、68歳となる2022年までCEOとして居座る構えだと複数の関係者は指摘、返す刀で「だからこそフランス政府が彼の引きずり下ろしを画策している」と打ち明けるのだ。
 何せ彼がルノーのCEOに就いたのは2005年のこと。既に在任10年に及ぶ。業績低迷で日産にオンブにダッコの中、今後7年も居座ろうとすること自体、尋常ではない。

 同じことは日産にもいえる。2000年の就任以来、既に社長在任15年になる。とうに“コストカッター”としての賞味期限が切れているだけに、問題は誰がどのタイミングで首に鈴を付けるかだ。
 「フランス政府はルノーのCEOから追放したい半面、日産では続投を容認したいようです。彼が退いてしまったら、日産が打ち出の小づちでなくなると心配しているのです」(経済記者)

 しかし、日産はルノー以上に人材が豊富。資本の論理は簡単に覆らないが、サッサと“お引き取り”願っても困ることはないだろう。

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