そもそも、もの忘れの原因は、
(1)脳の老化 (2)偏った食生活 (3)睡眠不足 (4)ストレス (5)病気
以上の5つと言われている。この中でも特に、今回は食生活の点から、原因を深く探っていきたい。
もの忘れと密接な関係があると言われているのが、日本人の食の欧米化。もともと日本人は、お米を中心に肉、魚、野菜をバランスよく食べる食生活を送っていた。ところが近年ではインスタント食品やファストフードを食べる機会が増えたため、食生活が偏ってしまい、摂取できる栄養についても偏りが。脂質や飽和脂肪酸、コレステロールなどの過剰摂取ばかりが進んでしまっている。一方でもともと日本人がよく食べていたマグロ、サバやブリなどの青魚があまり食べられなくなってしまった。これにより脳の働きをよくするDHAやEPAがあまりとられなくなってきており、結果としてもの忘れが増えてきていると考えられている。
更にお米が食べられなくなってきていることによっても弊害が。脳のエネルギー源である炭水化物の摂取量が減ってしまっていることも、もの忘れが多くなる原因の一つとして考えられている。このように食事の偏りやお米離れは、脳の栄養不足に繋がってしまっており、結果としてもの忘れが起きやすくなっている。柴田先生も、物忘れが起きやすい人として
(1)精神的ストレスを抱えている人 (2)働きすぎな人 (3)寝不足の人
をあげている。「こういった方は、自律神経が乱れることで、もの忘れをしやすくなります。また栄養バランスが乱れがちな人も脳に十分栄養が行き届かなかったり、神経伝達物質の生合成やはたらきがうまくいかなかったりします。また加齢に伴い、記憶力は低下するので、物忘れが起きやすくなるとも言えます」とのことで、ライフスタイルが乱れがちな人や、ストレスを強く抱えている人は特に注意が必要だ。
脳のエネルギー源ともいうべき炭水化物の不足は、特にもの忘れにつながってしまいがちだが、他にも不足してしまうことでもの忘れの原因になると言われている栄養素が、以下の5つ。
(1)ビタミンE (2)ビタミンB6 (3)ビタミンB12 (4)DHA (5)GABA(ギャバ)
また炭水化物の不足による脳のエネルギー不足には柴田先生も警鐘を鳴らしており、「ビタミンEやGABAといった栄養素ももちろん重要で、また脳は、ブドウ糖を唯一のエネルギーとします。最近では糖質オフダイエットが流行っていますが、体内で炭水化物が不足すると脳に十分なエネルギーが取り込まれないので、もの忘れが増える原因となる。炭水化物の中でもお砂糖や果物などの単糖類・二糖類よりはゆっくりと吸収されていく多糖類がおすすめです。スイーツやジュースではなく、ごはん・パスタ・パン・麺類などを摂りましょう」とコメント。炭水化物以外にも、もの忘れを防止するためには様々な成分が必要で、特にGABA(ギャバ)に関しては、ストレスを緩和させる効果と脳細胞の破壊を抑制する効果もあり、もの忘れ対策に有効かも。ストレスのかかる受験やプレゼンでパフォーマンスを発揮するためにはGABAを効率的に摂取することが効果的といえるだろう。
先にあげた「もの忘れが多い人に不足しがちな栄養素5選」は、現代人が普通に食生活を送ってしまうとどうしても不足しがちな栄養素ばかり。例えばDHAは青魚などに多く含まれるが、肉食が中心となっている現代人はどうしてもなかなか摂取することができない。またGABA(ギャバ)も、一時ブームにはなったものの、含有されている食べ物の種類が非常に限られている。
こうした中で、最近注目を集めているのが「発芽玄米」。栄養価はあるものの食べづらいという意見も多い玄米に対して、わずかに発芽することでぬか層がやわらかくなり、栄養や甘み成分、うまみ成分が増えたものが発芽玄米。おいしさや食べやすさはもちろん、たくさんの栄養がしっかり摂れるのが大きな魅力だ。特に注目するべきはGABA(ギャバ)やビタミンEが豊富に含まれている点。日頃の食生活で「もの忘れ」に対抗できる、数少ない食品と言えるだろう。
柴田先生も発芽玄米には太鼓判を押しており、「(発芽玄米は) GABAが多く含まれているので有効です。血圧と神経の調整作用をするGABAは脳内の血流を良くし、酸素供給量を増やしたり、脳細胞の代謝機能を高める働きがあります。故に、脳細胞の活性化の他、血栓症・高血圧・肝臓・腎臓の機能改善・肥満防止などの効果があると言われています。また、白米に比べて良く噛むことができるので、噛むことで脳の活性化にもつながります」と、栄養面・食感の両面から、もの忘れ対策に適した食べ物とのこと。
GABAが多く含まれる発芽玄米の食べ方については、「GABAの受容体は脳だけではなく、腸にもあると言われています。どんなにGABAが含まれている食べ物を食べても、腸できちんと消化・吸収されなければ栄養素として働くことができません。玄米から発芽玄米にすることによって、GABAの量が増えるだけでなく、発芽処理によって、玄米中では吸収されにくかった栄養素の吸収も良くなります。きちんと浸水させてから炊くこと。良く噛んで食べること(早食いを避ける)。などがGABAの吸収率をあげてくれると考えられます」と柴田先生はアドバイスしている。
【参考サイト】
http://www.fancl.co.jp/genmai/kodawari/
【柴田 真希】管理栄養士
(株)エミッシュ代表取締役。Love Table Labo.代表。1981年、東京生まれ。女子栄養大学短期大学部卒業後、給食管理、栄養カウンセリング、食品の企画・開発・営業などの業務に携わり、独立。27年間悩み続けた便秘を3日で治した「雑穀」や「米食の素晴らしさ」を広めるべく、雑穀のブランド「美穀小町」を立ち上げる。現在はお料理コーナーの番組出演をはじめ、各種出版・WEB媒体にレシピ・コラムを掲載する他、食品メーカーのコンサルティングや飲食店のメニュー開発やプロデュースなどを手がける。著書に「私は「炭水化物」を食べてキレイにやせました。」「ココナッツオイル使いこなし事典」(ともに世界文化社)、「はじめての酵素玄米」(キラジェンヌ)、「スーパーミルク健康法」(小学館)、「やっぱり、塩レモン!魔法の調味料で作る絶品レシピ」(河出書房新社)、しっかりごはんとシンプルおかず「おなかやせ定食」(主婦の友社)、「女子栄養大学の雑穀レシピ」(PHP出版)、「簡単! 美腸レシピ」 (エイムック)など。