海外ニュースサイト『Storypick』は2019年4月19日、カタールの社会学者であるアブド・アル・アジズ・アル・カズラジ・アル・アンサリ氏が、“言うことを聞かない妻をどのように罰するか”という動画をYouTubeにアップしたと報じた。
同記事によるとアブド氏は、「妻に暴力を振るう際はすぐに手を出さず、まずは言葉で注意し、ベッドを別にするなどの罰を与えることから始めることが大事」だと忠告。それでも妻の態度が改善しないのであれば、最終手段として暴力を使うべきだと説明しているそうだ。ただし、暴力を振るう際は、決して顔や頭を叩いてはならず、肩などをできるだけ軽く、出血したりアザが残ったりしないように叩くことが大切だと主張している。同記事は、アブド氏が妻の罰し方を説明した動画も公開。動画の中でアブド氏は、男性の役割について「夫は妻に家のリーダーが誰であるか分からせる必要があるだろう。女性は強い男を好むものだ。夫は妻を愛しているからこそ罰を与えるのだ」と語っている。゛
この動画が世界に拡散されると、ネット上では「暴力を正当化するなんて最低。私がこの男を殴ってやりたい」「男性が女性を支配して愛し合えるのか疑問」「カタールにこういった思想があると思うと怖い」「こういう男と結婚した女性がかわいそう」「自分の夫がこんな動画配信していたら即離婚する」「カタールの女性はどういった気持ちで生活しているのか」といった批判の声が相次ぎ大炎上。5月7日18時現在、YouTubeのコメント欄は閉鎖されている。
カタールは、男女格差が顕著な国だ。世界経済フォーラム(WEF)が2018年に発表した男女格差の大きさを国別に順位付けした「ジェンダー・ギャップ(男女格差)・レポート」では、カタールは149カ国中127位でワーストレベルに位置している。WEFのランキングは、経済・政治・教育・健康の4分野14項目で、男女間の不均衡や格差の度合いを指数化し、順位を決定している。ランキングを見ると、カタールも含めた中東地域で、男女間の不均衡や格差が多くみられるようだ。
その理由について、『Newsweek』は2016年11月、イスラム教が強い影響力を及ぼしているのではないかと指摘している。カタールではほとんどの国民がイスラム教徒だが、イスラム教徒には男性中心の伝統があり、夫婦間でも妻が夫に金銭の使い道や家族の在り方について意見を述べることはあまりないそうだ。
また、貿易・投資促進や開発途上国研究に取り組む独立行政法人『日本貿易振興機構』(ジェトロ)の2012年の報告によると、カタールの国民の多くがイスラム教の中でも特に戒律が厳しいと言われているスンニ派に属しており、女性が家族以外の男性に髪の毛や体のラインを見せないよう徹底しているそうだ。大学も男子学生と女子学生が学ぶエリアが分かれており、スポーツジムなどの施設も女性専用の場所でない限り、女性が利用することはできないという。
宗教によっては男性が女性をしつけ、男性が優位に立つべきとの教えがあったり、国によっては、女性は男性を敬い、男性の意見に従うべきという習わしが現代も残っているのが現状だ。しかしどのような理由があるにせよ、暴力は許されることではない。男性の強さを分からせるために女性を殴るなど、決してあってはならないことだ。