「井端(弘和=40)の引退とコーチ就任も決まり、一軍レベルの内野手の頭数が足らなくなってしまいました」(プロ野球解説者)
脇谷の2015年の推定年俸は2400万円、人的・金銭的補償も発生しない『Cランク選手』でもある。また、打撃面でも期待が持てる。脇谷は今季、西武打線の3番も任されてきた。「打てる内野手」「左の代打」…。巨人の補強ポイントも埋まったと見ていい。だが、この脇谷の帰還について着目すべきは『戦力』の話ではない。脇谷がFA権を行使した後に出た高橋監督と堤辰佳GMのコメントだ。
「球団に(脇谷との交渉は)任せています」
高橋監督は「補強には関与しない」と強調した。各メディアに『脇谷帰還』のことを質問される度に、そう繰り返してきた。堤GMも「補強について、高橋監督と相談しないのか」の問いに、「監督の意向ウンヌンは聞いていない。こちらから脇谷の話を持ち掛けたが、『お任せします』しか…」と答えている。
この両者の発言は意味深い。
高橋政権になって、フロントと現場の関係が確実に深まったと見ていいだろう。前任の原辰徳監督の時代、GMが暴走し、一部案件を巡って裁判沙汰にもなっている。原前監督が“出しゃばり過ぎたとき”もあった。14〜15年オフに獲得した相川亮二、金城龍彦の獲得は原前監督が自ら連絡を入れ、フロントとの正式交渉を段取りしたとされている。フロントが暴走すれば、現場は面白くない。指揮官が自身の要望を押し通せば、フロントは自分たちの仕事を否定されたことになる。戦う集団である以上、熱くならなければウソだ。しかし、組織としてはお互いが一歩譲り合うような関係のほうが理想的だ。
今さらだが、堤GMは高橋監督と同じ慶應義塾大学野球部の出身で、在学当時は主将も務めたという。当然、高橋監督は絶大な信頼を寄せており、堤GMも「カワイイ後輩のため」との思いは誰よりも強いはずだ。
経営陣が求めた巨人の改革とは、フロントと現場の一体感である。
先のプロ野球解説者がこう続ける。
「読売の経営陣がいちばん嫌う報道は巨人フロントのゴタゴタを扱ったものです」
読売首脳陣はこう考えたのではないだろうか。「ヨシノブを監督に選んだのは間違いではなかった」と…。(スポーツライター・飯山満)