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DeNAがラミレス監督を招聘した利点

 今季、セ・リーグは前年最下位のヤクルトが優勝を勝ち取った。アレックス・ラミレス新監督(41)を迎えたDeNAベイスターズが「最下位から優勝」を再現してくれるかもしれない。

 鹿児島県・奄美大島での秋季キャンプ中、ラミレス監督のメモを取る姿が多く見られた。現役時代から“メモ魔”であり、対戦投手の特徴やバッテリーの配球傾向を書き記すなど研究熱心な選手であることは有名だった。気が付いたことはすぐに手帳に書きとめるところは監督になってからも変わらないようだが、ブルペンを視察したときはペンを走らす時間がとくに長かった。
 関係者によれば、三嶋一輝(25=5勝5敗)に期待しているそうだ。
 「対戦打者のインコースに強いボール(直球)が投げられるか否か、その素質を持っていると称賛していました」
 中畑清前監督の言葉が思い出される。「エースを張れる投手と正捕手を補強したら」−−。
 DeNAがラミレス監督の就任を発表した際、一部メディアは話題作りと見ていた。観客動員数を伸ばして行けたのは、中畑清前監督によるところが大きい。その明るさと、若い選手たちがマッチし、DeNAは本当に魅力的なチームになった。中畑前監督が底上げした戦力を引き継ぎ、実務的な年長指揮官で優勝を狙う選択肢もあっただろう。進藤達哉ヘッドコーチを昇格させる人事も考えられたはずだ。あえて、いったんチームを離れたラミレス氏を招聘したのは、明るさの継承だけではなく、現有戦力を客観的に見てほしいと思ったのではないだろうか。

“客観性”と言えば、ドラフト会議中のラミレス監督の様子が思い出される。
 12球団の1位入札選手が全てコールされた後、DeNAの今永昇太(22=駒大)の単独指名が決まった。大学ナンバー1左腕だが、「故障明け」ということで指名を見送った球団が出たようだ。即戦力か否かで見れば疑問符は残るが、チームは左の先発候補を探していた。2014年は先発で勝ち星を上げた左投手はゼロ。今季は新人の石田健大がいたが、学生時代に痛めた左肩の影響で、プロ初勝利は8月になってしまった。そういった状況を考えると、本調子になるまで多少の時間が掛かったとしても、実力に太鼓判が押されている今永の指名は間違っていない。また、その今永の交渉権の獲得が決まったときと、2位で全球団が1位候補リストに入れていた熊原健人(22=仙台大)を指名した際、ラミレス監督は淡々としていた。他球団は「下位チームから指名していくウェバー制の特徴」で好投手を2人も指名できたのを羨んでいたのに、だ。ドラフト候補のアマチュア投手のことはよく分からなかったのだろう。
 そう考えると、ラミレス監督は新人投手も“客観的”に評価することになる。いや、先入観がないほうがいい。監督とは、1位指名の投手に過度な期待をしがちである。ヘタな重圧を与えないほうが新人投手のためだ。

 ラミレス監督は秋季キャンプ終了後、目立った選手として、投手では山口俊を、そして、野手では捕手の高城俊人を挙げていた。中畑前監督の挙げていた補強ポイントには『正捕手』もあった。また、チームは社会人ナンバー1捕手の呼び声も高かった戸柱恭孝捕手(25=NTT西日本)の指名にも成功している。来季は高城、今季63試合に出場した黒羽根利規、戸柱が正捕手を争う贅沢な布陣になる。そして、ラミレス監督が高城の名前を挙げたということは、来季のDeNAは「優勝圏内で戦える」と見て良いのではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)

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