長男の木村一八は、俳優。やすしが、“人生は一か八か”という理由で命名した。中学生のときに早々と地上波でレギュラー番組を抱え、その翌年には銀幕デビュー。いずれも、やすしが出演している作品だった。やすしの相方・西川きよしの次男・西川弘志と二世漫才を披露したこともあったが、彼の名を一気に全国規模にしたのは、女優・中山美穂との初共演連ドラ『毎度おさわがせします』(TBS系/85年)。主役に抜擢され、やすしと同じ吉本興業(現よしもとクリエイティブ・エージェンシー)に籍を置くやいなや、期待の若手俳優として跳躍した。
ところが、順風満帆だった矢先の88年、19歳で飲酒したあとにタクシー運転手に暴行を加え、傷害容疑で逮捕。未成年飲酒・喫煙、暴力沙汰によって、吉本は専属契約を解消した。芸能活動を停止中、追い討ちをかけるように、やすしも飲酒運転で摘発され、親子そろって契約解除の運びとなった。
一八はのちに、別の事務所に移籍して俳優活動を再開するも、傷害罪で再逮捕。銃刀法違反により現行犯逮捕も経験し(釈放)、プライベートは波乱に満ちた。現在も、演じる仕事はやめていないという噂だが、表舞台には久しく出ていない。
一八には、やすしが再婚相手とのあいだにもうけた次女・ひかりがいる。彼女は00年、「さゆみ・ひかり」というコンビ名で漫才の道に進んでいる。相方のさゆみは、宮川大助・花子夫妻の長女・宮川さゆみ。つまり2人は、偉大すぎる有名上方漫才師を親に持つ者同士なのだ。
地元・関西では、浪速のしゃべくり漫才師の名にふさわしい軽妙なトークがウケて、バラエティ番組を中心に活躍した。ところが、関西から飛躍することがないまま、ひかりは僧侶と結婚・出産。よしもとから除籍していないが、一線から退いたイメージが濃い。
そんな彼・彼女たちと異なって、今も芸人でありながら、売れる気配をまったく感じさせず、それが芸風になっている女性ピン芸人がいる。バターぬりえだ。今月29日に放映される日本一あら削りなお笑い賞レース『朝まであらびき団スペシャル あら−1グランプリ2017』(TBS系)で、久しぶりに首都圏オンエアに乗る彼女。父は、“すべり芸の達人”村上ショージだ。
バターは、13年に開催された『あらびき団』の企画“あら−1グランプリ”で、無名ながらも初代チャンピオンに君臨。のちに、父がショージであることをカミングアウトして、16年、親子共演の回で『ナカイの窓』(日本テレビ系)に呼ばれて、中居正広と初共演している。
やすしの破天荒を受け継いだ一八と、その反面教師のひかり。宮川花子のマシンガントークを継いださゆみ、冷笑系ギャグに負けないバター。ベテラン関西芸人の親から習得するワザは、人それぞれのようで…。