最低賃金は、世間一般の賃金水準、働く人の生計費、企業側の支払い能力を考慮した上で、都道府県の経済状況に応じ、A・B・Cの3つのランクに分類して示す。
東京、大阪など6都府県からなるAランクと、北海道、福岡など28道府県のBランクの引き上げ額は共に63円。岩手、沖縄など13県のCランクは64円とした。下位ランクの引き上げ額が上位ランクより高くなるのは初めてだ。
目安どおりの引き上げされた場合、全都道府県で最低賃金が1000円を超える。東京都は1163円から1226円、最も低い秋田県は951円から1015円となる。
政府は、20年代に全国平均1500円という目標を掲げているが、達成には毎年度7.3%の引き上げが必要となる。石破茂首相は「年によって変動はあるが、今後さらに努力をしたい」と述べた。
こうした引き上げの背景の一つに物価高がある。中央審議会の小委員会において、労働者側は、「最賃(最低賃金)に近い時給で働く労働者の生活は昨年以上に苦しくなっている」と主張していた。小委員会は、最終的に、物価高で家計の負担は増えているとして、過去最大の引き上げ額になった。
一方で、使用者側は、中小企業などを考慮し、「過度の引き上げは経営を圧迫しかねない」としていた。また、時給が上がれば、所得税が課される「年収の壁」に短い期間で到達するため、働き控えの動きが広がり、人手不足が進む懸念もある。
ネットでは、「税金も上がっているし1000円でも少ない」「いろいろな所得制限を一緒に引き上げないと働き控えせざるを得なくなる」「地方の中小企業はどんどん経営が苦しくなる」などさまざまな意見が並んだ。
今回の目安を踏まえて各都道府県の審議会が上げ幅を決定する。審議の行方にも注目したい。