東京都の取り組みは「アフォーダブル住宅」。子育て世代や一人親家庭などが手頃な価格で安心して住むことができる住宅だ。そのために「官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンド」を創設し、都は最大100億円を出資、民間側も同額以上を出資することで、総額約200億円規模の投資を目標としている。
このほど、その事業者として野村不動産や三菱UFJ信託銀行などが入る4グループを選んだ。実際の投資資金の運用や物件の選定、不動産の取得・管理などは民間の運営事業者が行う。
住宅は2026年度から順次供給され、家賃は相場より2割程度安く、約300戸。格安住宅と言えば、すでに大量の都営住宅があるが、都営住宅は所得などの入居基準が厳しいため、そこから外れる世帯を支えるのが目的だ。現在、入居対象は、18歳未満の子どもを養育する子育て世帯を挙げている。
前大津市長で弁護士の越直美氏は「物価高に賃金の上昇が追いつかないことが根本的な問題」と指摘する。その上で、「不動産では建築資材が高騰しているのと、一部の地域はこれでも海外よりも割安感があるので外国人投資家が購入する」と話す。
番組レギュラーコメンテーターの玉川徹氏は「バブル前後にマンション価格は激しく動いたにもかかわらず、家賃はあまり変わらなかった。家賃が上がり始めたということは、物件価格がさらに高騰していく可能性が高い」と指摘する。
今後の課題として考えられるのは、越氏が指摘した建築コストの問題だ。また、建築現場では慢性的な人手不足から人件費の上昇も高水準で推移している。
マルタカ不動産の宮本俊子代表は「求めている方は15~20万円で3LDKがほしいので、条件が一致しない」と指摘する。
総額200億円規模のファンドであっても、供給できるアフォーダブル住宅の戸数には限界がある。調達できる住宅の立地や規模によっては、ユーザーの期待に応えられないかもしれない。

