昨年は本人も「最悪な一年だった」と吐露するほど低迷。ファームでは打率.211と苦しんだが、オフは大和と牧秀悟の自主トレに志願参加するなど5年目の今シーズンに懸けていた。するとファームでは4番に抜擢されるなど打撃好調で、打率は.324をマークし、ウリである鬼肩も健在。今月16日にはあの超大物、トレバー・バウアーとバッテリーを組み、臆することなくリードで引っ張るなど印象的な活躍も見せ、やっと一軍からお呼びがかかった。三浦大輔監督も「キャッチャーだけじゃなく、打者としてでも選択肢が増える」と歓迎の意を表した。
これで現在は34歳、プロ16年目のベテラン・伊藤光に33歳の戸柱恭孝、6年目の24歳・山本祐大に益子と、キャッチャー4人体制で戦う陣容となった。
昨シーズンはソフトバンクに移籍した嶺井博希が主戦としてマスクを被っていたが、今シーズンはピッチャーによってキャッチャーをあてがう戦法にチェンジ。昨年は前半のみの起用に終わっていた山本は、完全復活を狙う東克樹と3戦すべてコンビを組み、全てのゲームでクオリティスタート達成をアシスト。右肩の肉離れから復帰した大貫晋一ともバッテリーを組み、5回自責点2の及第点ピッチングを引き出した。また昨年ファーム降格の原因となってしまった打率.103とさっぱりだったバッティングでも、現在打率4割ジャストと目覚ましい成長を遂げ、存在感を増している。
このオフには伊藤光の4年契約が満了、戸柱は順調ならばFA権を獲得する。来シーズンもベイスターズでプレーするか不透明な状況だ。ここに益子が割って入ることができれば、キャッチャー陣でより高いレベルでの世代間闘争が繰り広げられ、結果的にレベルも上がってくる相乗効果も期待される。
昨年のドラフトでは大阪桐蔭高で数々の栄冠をつかんだ松尾汐恩が1位で入団し、非凡な才能を発揮しているが、まだまだ覚えることが多い状況。まずは山本と益子が、25、26日と連日お立ち台に上がった”BIG2"の壁を乗り越えなければ、明るいベイスターズの未来は見えない。
取材・文・写真 / 萩原孝弘