22年シーズンの楠本は、自己最多の94試合に出場し打率.252、ホームラン6と結果を残すことに成功。打順も2番や6番と変わりながらも「本当に前のバッターの人たちが素晴らしいバッターばかりなので、流れを止めないように後ろにつなぐだけしか考えていないです。自分ができることを一生懸命やるだけです」と無心でプレーを続け、勝利を決定づけるヒットだけでなく、バントや進塁打など点を線につなげる役目も果たした。
一時期はけがやコロナで離脱もあり、7月には打率.077と苦しんだが、7月28日「ファームの試合に出させてもらって、感覚が戻ってきた。それを変えずにやり抜いている」と一本足など、早めにタイミングを取るスタイルが功を奏し、8月は打率.274、得点圏打率.384、9月は打率.345、得点圏打率4割ジャストといい形でシーズンを終えた。
秋季トレーニングでも「楠本はフィジカルも技術も両方、こちらの判断で今日までフルでやってもらいました」との首脳陣の方針のもと、フェニックスリーグ帰りの若手に交じって体をいじめ続けた。やり遂げたことで三浦監督の目にも留まり、20日のトレーニング打ち上げの際も最後の手締めを任された。
2018年のルーキーイヤーから開幕一軍切符をつかみ、19年はオープン戦首位打者。20年はファームで無双し、21年は代打の切り札としてチームに貢献と着実にステップアップしてきたが、今シーズンも一気にポジションを奪うまでには至っていないのが現状。バットコントロール抜群の天才打者は秋のトレーニングを糧に、6年目の来季に覚醒の時を迎える雰囲気が漂ってきた。
写真・取材・文 / 萩原孝弘