この現象が一般的に知られるようになったのは、1982年公開の映画『ポルターガイスト』が最初だとされている。この現象の周知に一役買ったのが監督のスティーブン・スピルバーグであるならば、この言葉を最初に英語圏に導入したのは超常現象研究者のキャサリン・クロウだという。
1848年、クロウは著書『The Night-Side of Nature: or Ghosts and Ghost-Seers』を出版した。この書籍はこれまでに記録された幽霊をはじめとする、科学で容易に説明できないあらゆる超自然的な現象や霊体験を網羅的に記録した、当時としては珍しい書籍であった。
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1790年に英ケント州に生まれたクロウは、1833年にエジンバラに移り住むと、小説で生計を立てるようになった。小説や短編小説をいくつか発表した彼女は、ロンドンの作家たちと交流し、チャールズ・ディケンズの文通相手にもなった。歴史家のキャロライン・ニールセンによると、クロウは当時の犯罪小説では珍しい女性探偵を主人公にした作品を発表しているという。
そして彼女はノンフィクション作品『ナイトサイド』の中で、『ポルターガイスト』と『ドッペルゲンガー』という2つのドイツ語による単語を生み出した。
ポルターガイストは2つの言葉からなり、「ノックする」の意味の「ポルターン」、「幽霊、精神」を意味する「ガイスト」を組み合わせた。したがってポルターガイストは「ノックする霊」、つまりノックなどのいたずらをして自分の存在を知らせようとする霊をさすことになる。
ポルターガイストというと、ひとりでに重い家具が動く様子が記録されたりもするが、物に働きかけて自分の存在をアピールしようとする霊だと考えれば問題ないだろう。なお、ドッペルゲンガーは「ドッペル」が「二重」、「ゲンガー」は「行く者」をさすそうで、生きている人間の複製のような霊を意味しているという。
しかし『ナイトサイド』が出版されて間もなく、クロウは精神的な問題を抱えるようになった。当時は精神疾患に関する理解も少なく、あらぬうわさも流されて世間から消え去ってしまった。そして1872年に82歳でこの世を去った。
しかし、彼女が残した著作は素晴らしい遺産であることは間違いない。『ナイトサイド』は、超常現象の調査に対する大衆の好奇心が旺盛であったことを証明するものであり、チャールズ・ディケンズはこの本を、出版された本の中では「最も驚くべき心霊現象のコレクションの一つ」と絶賛している。
この本は16刷まで売れ、間違いなく英語圏でポルターガイストという言葉を広めるのに役立ち、一つの怪奇現象を世間に定着させるに至ったのである。
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Catherine Crowe, the Woman Who Brought the Word 'Poltergeist' to English(HISTORY AT NORTHAMPTON)より
https://historyatnorthampton.com/2019/10/31/the-sad-story-of-a-victorian-ghost-seer/