試合途中から代打で登場していた大田は、11回にヒットを放ち、佐藤輝明のまずい状況判断もあって三塁を陥れ勢いをつけると、1点を勝ち越した12回にはレフトの頭上を越える走者一掃のツーベースヒットでタイガースの息の根を止める活躍を見せた。
ブルーのユニフォームで初のヒーローインタビューでは「ああいう場面で打てたのでホッとしています。貢献したい気持ちでやってきたが、貢献できていなくて…。貢献できてうれしいです」と声を弾ませ「一歩ずつ(チームの)一員に近づいている。まだまだこれからも貢献できるように」と言葉に力を込めた。
この日まで大田はオープン戦で.094と調子は上がらず、なんとか開幕一軍はつかんだものの、開幕してからは8打数ノーヒット。ストレートに差し込まれ変化球に泳ぐ状況で、昨年打率.204、ホームラン3本と不調だった状況を打破できていなかった。
しかも開幕前にけがのため戦線離脱したネフタリ・ソトが5日からファームで実戦復帰。いきなりライトにソトらしい放物線を描くホームランを放ち、6日にはファーストでフル出場。ヒットは出なかったものの打球はしっかりと上がっており、一軍合流へ向け着々と準備を進めている状況。今年は“恐怖の7番バッター”として期待され、来日初年度の2018年は41本、翌年の19年は43本と連続してホームランキングを獲得している大砲の代わりに、調子の上がらない大田がファームで調整する可能性も十分考えられた。しかしこの日の活躍で、崖っぷちから踏ん張った印象だ。
「神奈川に縁がある。恩返ししたい」との思いを胸に、ベイスターズ移籍を決意した大田泰示。強肩と俊足も魅力のスケール大きい“セクシー”な男の反撃は、ここから始まっていく。
文・取材・写真 / 萩原孝弘