阪神がソフトバンクを戦力外となった左腕・渡邉雄大投手の獲得を発表した(12月9日)。育成選手として契約する予定だという。渡邉は今季一軍戦には6試合しか登板していないが、ファームでは34試合に登板し、防御率1点台と、リリーバーとして安定した成績を残している。
おそらく、阪神二軍首脳陣が「まだ出来る!」と評価していたのだろう。8日に開催された12球団合同トライアウトを受けずに“再起の場所”を得た。
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「左ピッチャーが一気に増えた感じ。矢野燿大監督は『(各対戦チームに)左打ちの好打者を多いこと』をこぼしていたし」
そんな風に語るメディアも少なくなかった。
今年のドラフト会議でも、鈴木勇斗(創価大)、桐敷拓馬(新潟医療福祉大)、伊藤稜(中京大/育成)と3人の左投手を指名しており、高橋遥人、今季10勝を挙げた伊藤将司、来季から先発に挑戦する及川雅貴などもいる。
「獲得が決まった渡邉はサイドスロー。岩崎優とはタイプの異なるリリーバーなので、もし渡邉が一軍戦力になったら、相乗効果も期待できます」(在阪記者)
しかし、左のサイドスローと聞くと、腑に落ちないこともないわけではない。
阪神は昨年途中にサイドスローに転向した石井将希を解雇している。今年2月のキャンプではOBの藤川球児氏が1時間以上も付き添って指導していた。サイドスローに転向したばかりであり、もう少し待ってあげても良かったのではないだろうか。
「来年、矢野監督は勝負をかけるつもりなんでしょう。前半戦は独走状態だったのに終盤戦に失速し、ヤクルトに逆転優勝を許してしまいました。12球団最多の77勝を挙げながら、優勝できなかったショックはかなり大きい」
関西で活躍するプロ野球解説者がそう言う。戦力を補強する上で、“人員整理”は避けられなかったようだ。
また、「投手陣の再整備」ということでこんな懸念も聞かれた。
「正捕手・梅野隆太郎が国内FA権を行使せずに残留します。安堵した関係者も多いですが、矢野監督は二番手の坂本誠志郎とレギュラーを競わせるつもり。チーム内競争は良いことですが、再び複数の捕手を使い分ける戦略になるかもしれません」(前出・プロ野球解説者)
“捕手併用”の弊害は投手陣に及ぶ。補強された多くの左投手も混乱してしまうかもしれない。トラ再建はどうなるのだろうか。
「今年は2月4日に紅白戦を行いました。東京五輪の影響で開幕戦が少し前倒しされたせいもありますが、優勝したヤクルトが実戦に入ったのは15日。来年も早めの紅白戦を予定しているそうですが、『鍛え上げる時間』が少ないのでは?」(前出・同)
焦りは禁物だ。矢野監督の要望通り、左投手の頭数は増やした。トラが左投手王国に変貌すれば良いのだが、それまで矢野監督は時間をかけて待つことができるのだろうか。(スポーツライター・飯山満)