ピッチャーとしての出場を避けた理由は、前日に右肘を直撃したデッドボールによる影響。「アッー!」と悶絶し、うずくまるシーンを見せられれば先発回避も当然だが、チームメイトは驚いていた。それは、ホームランという結果を出したからではない。現地関係者によれば、大谷は同試合中から「投げたい!」と、ジョー・マドン監督にアピールしていたからだ。
「前日も死球の後、ノーサインで盗塁を仕掛けたり。負けず嫌いな性格なんだと思いますが、『投げること』と『打つこと』の両方をやっていないと、満足できないんでしょう」
NPB時代を知るプロ野球解説者がそう言う。そもそも、大谷は右肘にメスを入れている。また、大谷は「右投げ左打ち」である。投げる方の右腕を前に出しているため、死球は「投手・大谷」に影響が出やすいのだ。
もっとも、死球を食らった日は腫れ上がっていたらしく、その時点では3日の登板回避には素直に従ったそうだ。しかし、指名打者として試合に出ているうちに投げたくなったのか、急に「投げたい!」と言い始めたそうだ。
「マドン監督は指名打者で試合に出すのもためらっていました。でも、大谷本人が『バットを振るのは問題ない』と言い始めて…。無理をしていると分かれば交代させると言い聞かせてから、出場が決まりました」(米国人ライター)
>>エンゼルス・大谷の“乱調”は史上初の快挙だった? 現地メディアが称賛も、本人は故障の影響に苦悩か<<
大谷の「試合に出たい」の気持ちはさすがだが、こんな声も聞かれた。他の先発投手への調整に影響が出るというのだ。
「エンゼルスは6人の先発投手でローテーションを回しています。他チームは5人です。二刀流の大谷がいて、大谷だけは他の先発投手と登板間隔が異なります。ただでさえ、エンゼルスの先発ローテーションは変則なのに、大谷の投げたいという気持ちに応えていたら、他の先発投手に迷惑が掛かります」(前出・同)
登板を直訴したその試合後、マドン監督は米メディアに大谷の次回登板について質問され、こう答えている。
「マウンドに行き、95~100マイル(約153~161キロ)を100球近くも投げるとなれば、それは挑戦になる。だから、リラックスできる時間をもう1日か2日与えて、改めて様子を見てから」
やはり、無理をさせたくないと思ったのか、慎重な物言いをしている。
「指名打者で出場し、いつも通りにバットを振っていたので、早ければ5日か6日(現地時間)の登板になると思います」(関係者)
メジャーリーグ公式サイトによれば、大谷の9号アーチは推定飛距離427フィート(約130メートル)。今季、427フィート以上の飛距離をマークした本塁打はこれで4本となった。「打球速度が速い」とも評しており、こうしたデータを見る限り、大谷の右肘には死球の影響はなさそうだ。「投げたい」「打ちたい」「試合に出たい」、大谷は野球好きの少年がそのままオトナになったタイプなのかもしれない。それが、二刀流の原動力でもある。今季、大谷はとてつもない大記録を打ち立てるのではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)