「マン防」と呼ばれることもあるが、この略称を聞いて多くの人が思い浮かべるのは魚のマンボウの方だろう。ところが昔、和歌山県では本当に「マンボウが疫病よけとされていた」のだ。
和歌山市立博物館には、江戸時代後期のものとみられる大きなマンボウの版画が存在している。大きく丸い体に、上下に飛び出た三日月型のヒレが特徴的な姿は、現代の人々から見ても確かにマンボウと思えるものだ。
この版画では「満方」と表記されており、大きさは「壱丈五尺四方(約4.5メートル四方)」とある。なお、マンボウは「世界で最も重い硬骨魚類」のギネス記録を持つ魚でもある。1996年に千葉県鴨川市沖で捕獲されたウシマンボウが2.72メートル、2.3トンを記録しているので、この版画に描かれたマンボウはその倍はあるということになる。水揚げされた当時、多くの人が驚いたであろうことは想像に難くない。
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奇妙な生物や珍しい生物が発見されると、縁起が良いとされ、吉事や凶事の起きる前兆とされることも多かった。このマンボウは前者だったようで、「疫病よけ」として版画が出回っていたことが分かる。版画に描かれたマンボウの体には斑点模様が多数確認できることから、発疹が出て、かさぶたが生じて痕が残る天然痘が連想された結果、疫病よけのお守りとしてマンボウの版画が流通することになったのではないだろうか。
なお、和歌山市立博物館の「疫病よけマンボウ」は4月4日から展示中とのこと。気になる方は足を運んでみてはいかがだろうか。
※画像は『翻車考』栗本丹州著 文政8(1825)年のもの
(山口敏太郎)
参考ツイート
和歌山市立博物館
https://twitter.com/w_city_hakubuts/status/1377886482505986053