高額な接待は情報交換などを目的に行われたということだが、ちまたでも取引先との商談を進め、同僚との親睦を深めるためにこうした「飲みニケーション」が用いられることは少なくない。ところが、近年ではプライベートな時間を大切にする人が増えたことや、飲みの席でのパワハラ問題が取り沙汰されるなどする中で、仕事上の飲み会のイメージは悪くなりつつある。さらにコロナの影響もあって格段に機会が減った飲みニケーションだが、実際に効果は期待できるのだろうか。
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まず、「飲み」に欠かせないアルコールには、「判断力が低下する」「理性のコントロールが難しくなる」「開放的になる」「気分を高揚させる」といった作用があり、これらによって本音を口にしやすくなったり、コミュニケーションを円滑にする効果がある。「ただ親睦を深めるのが目的なら別に飲みの場である必要はないのでは?」という意見もあるが、アルコールは手っ取り早く他人と心理的距離を縮めることができるという点で重宝されている。
例えば、同僚や上司との飲み会の際には、人間関係の悩みや業務上の問題などについて相談しやすい状況が生まれるため、1人で抱え込むよりもストレスが軽減し、問題の解消につながることもある。これによってため込みがちなストレスが軽減・解消されるだけでなく、日常的な心理的距離も縮めることができ、仕事上での意思疎通が図りやすくなる。こうした良い循環の中で、個人個人のモチベーションがアップし、生産性の向上が期待できる。
一方、取引先とのお酒を伴う接待の場合は、判断力が鈍くなったり、気が大きくなるといったアルコールの作用を利用して契約を受け入れてもらいやすくなる状況を作ることができるのはもちろん、楽しい時間を共有することで心理的距離を縮めて要請を受け入れやすくする、あるいは「お礼に何かお返しをしなければ」という返報性の法則が働きやすくなる効果も期待できる。
ただし、飲み会にしろ接待にしろ、その場に参加している者が「楽しい」と思える場でなければ、良い効果は期待できない。例えば、体調が悪いにもかかわらずほぼ強制的に参加させられたり、同僚から長々と愚痴を聞かされたり、上司から一方的に説教を聞かされ続けるといった状況。たとえ接待される側でも、そもそも酒やタバコが苦手だったり、気が進まないが付き合いで仕方なく参加しているといった場合など、その場を楽しいと思うことができなければ、親睦を深めるどころか、さらにストレスをためてしまう結果となる。もしもそんなことが度重なれば、心理的に疲弊し、仕事のモチベーションを低下させてしまう恐れがある。
つまり、飲み二ケーションが仕事に与える効果の良し悪しは、飲みの席に参加する者が楽しいと感じることができるかによる、と言えそうだ。
文:心理カウンセラー 吉田明日香