新人選手の入寮は既婚者の選手を除けば原則全員が対象で、そこから数年間は寮生活を続けるのが一般的。新人選手たちはその数日後から行われる新人合同自主トレを経て、2月1日のキャンプインで本格的にチームに合流していくことになる。
入寮を伝える報道の中では、入寮時に持ち込んだものに注目が集まることも多い。今年の新人選手の中ではヤクルトのドラ1・木澤尚文が手のひらサイズの盆栽を持ち込んだことが話題となったが、過去には高級車のベンツを持ち込み周囲の度肝を抜いた新人選手がいる。
>>本に色紙にみかん10個? DeNA高卒ルーキーたちのユニークグッズは<<
ベンツを運転して入寮したのは、2015年ドラフトで8位指名を受けオリックスに入団した角屋龍太。当時の報道によると、当時25歳の角屋はプロ入り前はベンツはおろか車すら所有していなかったというが、オリックス入りを機に「自分にプレッシャーをかける」と一念発起。契約金2000万円を一部使用し、500万円ほどの値段のベンツを購入したという。
プロ野球選手がベンツを購入すること自体は珍しくないが、新人選手が購入し入寮時に持ち込むのは極めて異例。当然、2016年1月9日のオリックス選手寮「青濤館」への入寮日にはこの日入寮した12選手の中で一番の話題を呼び、ネット上にも「ベンツで入寮とはド派手だな、他の入寮選手もかなりビックリしてそう」、「プロ生活始まってもないのにこんな高い買い物するなんて度胸が凄い」と驚きの声が多数寄せられた。
また、角屋の“ベンツ入寮”はファンのみならず、前身のブルーウェーブ時代のOBであるマーリンズ・イチロー(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)も驚かせている。同年1月13日に角屋を含む新人11選手はほっともっとフィールド神戸で自主トレを行うイチローと対面する機会があったが、角屋のベンツ入寮を聞いたイチローは「アホやな~!」と爆笑しながら角屋にツッコミを入れたことが伝えられている。
ただ、多方面から注目を浴びる中プロ生活をスタートさせた角屋だったが、いざ迎えた2016年シーズンは右足首の脱臼などの故障の影響もあり「2登板・0勝0敗・防御率11.57」とサッパリ。この結果、角屋は一旦戦力外となった上で育成選手としてチームを再契約することになった。
翌2017年は4月1日~7月30日までBC・福井に派遣され8月1日からチームに復帰した角屋だったが、そこから一軍登板はなく二軍でも防御率「13.50」とほとんど結果を出せなかったため同年限りで戦力外に。2018年からはオリックスで打撃投手に転身し、裏方としてチームを支えていることが伝えられている。
ベンツを購入し自身を精神的に追い込んだものの、ほとんど数字を残せずに終わった角屋。プロ生活のスタート前から話題を集めすぎるのも考えものなのかもしれない。
文 / 柴田雅人