その年の7月17日の夜、神奈川県A市に住む自動車運転手の長女りょうこちゃん(仮名・2歳)が盆踊りの最中、市内の小学校校庭の防火用水で溺れて死ぬ事件が発生した。
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第1発見者は、近所に住む小学2年生(7歳)と1年生(6歳)で、「りょうこちゃんが溺れた」とりょうこちゃんの母親に伝え、母親が急いで駆け付けたところ、冷たくなったりょうこちゃんの姿があったという。
警察はりょうこちゃんがお祭りの最中に防火用水へ近づき、落ちてしまったものとして調査を開始したが、数点おかしな点に気が付いた。
まず、りょうこちゃんが死体となって発見された小学校校庭の防火用水は盆踊りの現場から200m離れた場所にあり、2歳児であるりょうこちゃんが一人で行くのは不自然である。
また、防火用水の中に入るには30センチの縁を乗り越える必要があり、りょうこちゃんが一人で乗り越えるのはこれまた不自然であった。
さらに、りょうこちゃんの体には防火用水から落下した時とは異なるアザや打撲の跡がついており、何者かに暴行された痕跡があったことだ。
警察は第1発見者である小学2年生と1年生の学童2名から事情を調べたところ、この二人がりょうこちゃんを防火用水に突き飛ばしたことが判明した。
実はこの学童2名は、この年の4月に近所の川で溺れている子供を救出。その際に保護者から200円のお小遣いとノートを貰った事に味をしめ、自作自演でおぼれている子供を助けて、再びお礼を貰おうと画策していたことが判明した。
最初は殺すつもりこそなかったが、りょうこちゃんが言う事を聞かなかったため、殴る蹴るの暴行を加え、突き落としたものの、防火用水から拾いあげることができず、結果殺してしまったという。
人助けをした少年達が、3か月後には一転、人を殺めてしまう事になるとは。今から60年前に発生したなんともやりきれない事件であった。
文:穂積昭雪(山口敏太郎事務所)