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「俺がやらなくて誰がやるという心境」と清和師。コシノ氏は「ここに並んでいること自体が奇跡。やるならここしかないと思いながら、なかなか言い出せなかったのですが、来る時が来た」と手ごたえを感じている様子だった。
二部構成の本公演は、第一部でプロジェクションマッピングを重ねた能楽堂でファッションショーを行い、第二部で清和師による演目「紅葉狩 鬼揃」を上演。舞台装置(塚)とシテ(主役)装束の一部のデザインはコシノ氏が手がける。
コシノ氏は「足袋じゃないと歩けない場所なので、ミニスカや足を見せるものは使えない。足袋でも歩ける衣装に」と工夫を明かした。「大きなつくりの洋服だと柱にぶつかってしまうので『柱を取ってもらえませんか?』と頼みました。無鉄砲なお願いを聞いてくれた」と感謝しきりだった。
ファッションショーには、能楽師の観世三郎太師も出演。父の清和師は「モデルではなく、あくまで能楽師として出ます。最近はコラボも多いですが、必ず区切りを認識してコラボすること。向こう側に片足を突っ込んだら二度と戻れないですから」と柔軟な中にも芸事への厳しい姿勢をのぞかせた。続けて、「『寿福増長』と言いますが、お客さんに幸せになるもとを提供していくのが能役者の心。コロナ終息と疫病退散を祈願して真摯に演じたい」と決意を披瀝した。
その場でコシノ氏から衣装のデザイン画も発表。エナメル素材にボンディング加工を施したものや、透け感のあるシースルーの衣装も。清和師からは「非常にシャープで斬新。格式と伝統を大切にし、能衣装の規範を守った上で作られている」と賛辞が贈られた。本公演は有料配信も予定されており、コシノ氏は「ちょっとした新しい風を吹かせたい。若い人たちに広く見られるチャンスになれば」と期待を寄せた。
今回、両者の縁を取りもった雑誌「ACT4」佐藤真理子編集長は、「コロナ禍で再三延期になる中、満を持しての開催。11月という時期は演目の『紅葉狩』にはぴったり。700年続いた観世の演出をアレンジするのはすごいことだと思う」と本公演の意義を語った。