同日の試合前、山口寿一オーナーが代表取材に応じ、原辰徳監督の続投を明言した。昨季から自身3度目の指揮を執ることが決まった時点で「3年契約」とも伝えられていた。まして、連覇目前の勝利監督を切るなんてことはあり得ないが、同オーナーはこんなことも話していた。
「一、二、三軍をまさに『ワンチーム』に束ねるマネジメント。コロナの特殊な状況の下でも、いい運営をやってもらっている。今年は想像していた以上に強くなった」
原監督は編成面でも“決定権”を持っている。ペナントレースが始まってから4件のトレードを成立させており、それらを指して、「場当たり的に戦力補強をしているのは違う」と、称賛していた。
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「楽天から獲得したウィーラー、高梨が活躍していますからね。それ以上に評価されているのは、4件目のトレードで田中貴也を送り出したことです(金銭トレード)。『飼い殺しはしない』という考えを、多くのフロント職員が支持しています」(スポーツ紙記者)
ウィーラーは敗戦濃厚だった9回裏、1点差まで追い上げるソロ本塁打を放ち、ファンを喜ばせた。一般論として、オーナーが監督を評価する時、「マネジメント」という言葉はあまり使われない。どんなタイプの選手を獲って、どう使っていくのか、原監督には明確なビジョンがあった。オーナーはそれを評価していた。
「同じく、途中加入の高梨も登板し、無失点に抑えました」(前出・同)
興味深かったのは、高梨も好投した同日の投手継投策だ。菅野を諦めた後、原監督と宮本和知投手チーフコーチが送り込んだリリーフピッチャーは、大江、高梨、ビエイラ。3点ビハインドで敗戦濃厚だったが、3人とも勝ち試合で使うリリーバーだ。チーム関係者がこう続ける。
「勝ち試合で使うリリーフ投手を送り続けたので、打線も『せめて菅野の負けを帳消しにしたい』と、最後まで諦めませんでした」
勝ちパターンの継投策が打線を奮起させたというわけだ。
澤村放出の交換要員で獲った香月も代打出場している。原監督は試合後、山口オーナーのコメントした内容を記者団に聞かされたが、「明日のことで頭がいっぱいだから分からない」とだけ返したそうだ。
連勝街道を突き進んでいたエースが負ければ、普通のチームなら、浮足立つところ。打線は「菅野のために」と最後まで奮闘した様子を見ると、原監督は負け試合にも意義を作ろうとしたのではないだろうか。そういう“ゲーム・マネジメント能力”はさすがとしか言いようがない。(スポーツライター・飯山満)