巨人・菅野智之が1938年春のスタルヒン以来となる開幕10連勝を達成した(9月8日)。原辰徳監督も川上哲治氏が持つ監督通算勝利数・1066勝まで、「あと1勝」に迫った。
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単なる勝利ゲームでも、こうした“附帯事項”やメモリアルが付くと、チームは活気づいていく。独走はもちろん、マジックナンバーの点灯も時間の問題となりつつある。そして、敗れた中日サイドから出たのが、冒頭のセリフ。エース・大野雄大を立てて敗れたショックも大きいが、結果論とは言え、ここまで菅野と3試合対戦して全部無得点、25イニング連続の無得点である。「菅野対策」を急ぐ必要も出てきた。
「菅野は『立ち上がりが悪い、配球を変えて抑えてきた』と一部のTVインタビューで語っていましたが、好調な原因はそれだけではありません。原監督のキャッチャーを固定しない采配も研究しなければなりません」
チーム関係者の一人がそう言う。
今季、菅野が登板する日は大学時代の後輩にもあたる大城卓三がマスクをかぶってきた。しかし、田口、戸郷、サンチェスらが投げる試合では炭谷銀仁朗がスタメン・マスクを務める試合もある。
「炭谷も侍ジャパンに選出された好捕手。炭谷と大城では配球パターンが異なるのはもちろんですが、どうも、大城が用心深い炭谷の配球を模倣する場面もあれば、炭谷が右バッターと左バッターでウイニングショットを変える大城の配球を真似してくる時もありました」(前出・同)
菅野、戸郷以外の先発スタッフが安定しないにも関わらず、巨人は勝ち続けてきた。継投策が成功していることも大きいが、捕手を代えることで配球のバリエーションを増やしてきた。しかも、その捕手陣が成功した配球案も共有し、情報交換もしているとなれば、対戦チームは対策を講じにくくなる。
「90年代のヤクルト・古田敦也氏に代表されるように、優勝するチームには絶対的な正捕手がいました。阿部慎之助が現役だった巨人も同様です」(プロ野球解説者)
『捕手複数制』が先発投手難のチームを独走させた勝因の一つだとすれば、他球団も捕手の起用法も検討してくるかもしれない。
試合前の巨人で恒例となっている光景がある。第3捕手の岸田行倫が円陣の中央に呼ばれ、笑いを誘いながら声出しをしている。「円陣番長」なるアダ名も付けられたそうだが、チームの雰囲気が明るければ、選手同士の情報交換はやりやすくなる。
「岸田は試合中もブルペンに行き、救援投手の好不調を確認し、炭谷らに報告もしています」(前出・同)
古田氏、阿部のような好捕手はなかなか現れない。無い物ねだりをするよりも、レギュラークラスの捕手を使い分けた方が得策だ。菅野の連勝記録は「捕手陣の総合力」によって生み出されたものでもあるようだ。(スポーツライター・飯山満)