同時にネット上を騒がせたのは、「愛のない正論」とも言えるツッコミだ。もちろん、本作には「メイがわがまますぎる」といったツッコミがかねてより存在しているが、最近の時流を反映した「2020年版」とも言える内容も見られた。
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一つが父親の職業についてだ。サツキとメイのお父さんは32歳で、大学で考古学の非常勤講師をしている。大学の先生と言えば聞こえはいいが、正規職ではないため収入は決して良くないだろう。そのため、副業として中国語の翻訳をしている。そうした立場に、「こんな不安定な仕事で病気がちな奥さんと、子供2人養えるわけがない」「母の療養じゃなくて、収入が低いから田舎に引っ込んで来たんだろ」「大学の仕事がある時は、メイを隣のおばあちゃんに預けるって都合良すぎ」といったツッコミが見られた。これは、現代のフレーズで言えば、「高学歴ワーキングプア」的な問題に属する話かもしれない。
お父さんへのツッコミは容赦ない。作中では、入院中の母親に代わって、12歳のサツキが家事を行い、メイの母親代わりにもなっている。これにも「小学生に家事押し付けてどうすんの」「これって児童虐待だよね」といった声が聞かれた。こうした声は、女性解放を目指すフェミニズム的視点からのツッコミと言える。同じような視点では、海外では、父親がサツキとお風呂に入っていることを問題と考える声も一部であるという。
もちろん、「トトロ」は昭和30年代前半の日本が舞台だ。そのため、「昔の子供は家の手伝いくらい普通にしてたよ」「あくまでアニメ作品として楽しめないのかね。心が狭すぎる」といった批判も生じている。こうした賛否両論を呼び起こしてしまうのも、それだけ知名度と人気が高い証拠なのかもしれない。