「好調なチームを牽引しているのは、復調したボーアとサンズの2人。大山悠輔を4番に固定できたのも大きい」(在阪記者)
同日からスタメンに糸井嘉男も帰って来た。矢野燿大監督が期待する左腕・高橋遥人も一軍に交流し、チームの雰囲気も明るくなったが、不安要素もないわけではない。「1番バッター」、プロ2年目の近本光司外野手の起用法だ。
今季の近本は「2番」の打順でスタートした。矢野監督が1番に糸井を置く攻撃的な打順を組んだからだが、その後、俊足の近本は「1番」に戻った。2日のゲーム終了時点で、36試合中26試合に近本が1番に入っている。しかし、今季の近本の打率は2割4分6厘と低迷。盗塁12はリーグトップだが、出塁率が3割1分1厘なので、「1番バッター=出塁とチャンスメーク」の役割を果たし切れていない。糸井、陽川らが代わって1番に入る理由はこの辺にありそうだ。
そんな近本の起用法について、賛否両論が出ていた。
「打撃不振には目を瞑って、使い続けなければリードオフマンとして育たないと指摘する阪神OBも少なくありません。矢野監督は他選手にもチャンスを与えるため、打順を固定しない方針ですが」(プロ野球解説者)
近本は四球をここまで「10」しか選んでいない。矢野監督のエコ贔屓を許さない起用法に称賛の声も出ているが、近年の阪神にはイヤなジンクスも見られる。
昨季、近本は「盗塁王」のタイトル以外にも、セ・リーグの新人安打記録を更新してみせた。1958年の長嶋茂雄氏以来の記録更新というのもスゴイが、2016年、当時新人だった高山俊は、新人選手の球団安打記録を更新したものの、2年目以降は伸び悩んでいる。さらに遡れば、新人球団安打記録の前記録保持者だった坪井智哉(1998年)も、2年目以降はパッとしなかった。
「陽川、中谷、伊藤隼、江越らも頭角を現し、次のシーズンに期待されました。でも、結果を残せませんでした」(前出・プロ野球解説者)
壁にぶち当たった選手たちの前例を見ると、近本は1番バッターとして、今後もレギュラーであり続けるかどうかの分岐点に差しかかっているのかもしれない。
矢野監督が近本を1番から外した直近の試合は8月1日。東京ヤクルトに2連敗し、DeNAとの3連戦初戦を引き分けた翌日である。チームの勝利を最優先した打順変更だったのだろう。
「矢野監督は近本を1番から外しても、2番で試合に使ってきます。打順が変更すればその役割も変わってきます」(前出・在阪記者)
近本は打順が変わることについて、特に何も言っていないそうだ。スタメンから外さないのも、矢野監督の愛情だろう。近本がスタメンから外れた試合は6試合しかない。この状況を中途半端とするのが非難する側の思想の一つにもなっているが、「近本の走塁能力は捨てがたい」という声も多い。この辺も矢野監督を迷わす理由になっているようだ。
リードオフマンを育てる――。近本を1番で完全に固定するとしたら、チームが好調な今しかない。(スポーツライター・飯山満)