フォークボールとスプリットは、どこか違うんだ!?
どちらも人指し指と中指の間にボールを挟み、打者の手元で落ちる変化球のこと。ここ2、3年に発刊された一部のメジャーリーグ名鑑や海外野球を扱った特集本では「スプリット」ではなく、「スプリッター」と記載されている。メジャーリーグ中継のテレビ解説者が「スプリット」と言うので、今回はそれに合わせるが、野球を扱うスポーツメディアもフォークボールとスプリットの明確な違いは知らない。「スプリット」はフォークボールよりも球速があり、落差が小さい。また、フォークボールよりも浅く握るとされている。「フォークボール」は回転数が少なく、打者の手元で大きく落ちると、定義づけられている。
「7月18日のサンチェスの『スプリット』は効果的でした。ストレートに近い球速があって、低めから鋭く落ち、落差もあって」
投手出身のプロ野球解説者がそう言う。球速があって、落差も大きいとなれば、スプリットとフォークボールの長所を合わせたようなものだ。しかし、人指し指と中指の間にボールを挟むその加減がスプリットとフォークボールの違いだとしても、その明確な線引きはない。
ヤクルト・吉田が登板した時の実況は、「スプリット」と言っていた。しかし、中日の橋本侑樹が投げる時は「フォークボール」とアナウンサーが言い、また、春季キャンプ中、橋本もメディアに持ち球を聞かれた時、「フォークボール」と答えていたように記憶している。
その橋本のフォークボールは、他投手とはちょっと異なる。
「橋本のフォークは『揺れる』というか、動きながら落ちています。落差は大きくないが」
関西地区担当の他球団スカウトの言葉だ。そもそも、橋本は大学在籍中にフォークボールを習得した。しかし、実戦で使えるレベルにはならず、本来、フォークボール、スプリットでも使わない薬指と小指でボールを支えることにした。
ひと昔前の野球用語になるが、「鷲掴み」に近い握り方だ。試しにその握り方で投げてみたら、「小さく揺れる」チェンジアップの軌道でボールが落ちるようになったと話していた。その独特の軌道で、橋本はドラフト上位指名を勝ち取ったのだ。
落差が小さいのなら、橋本が投げるのがスプリットで、サンチェスの持ち球がフォークボールというのが的確だが? どちらの落ちるボールも、対戦バッターを苦しめている。
野球メディアの慣例で、新人投手や新外国人投手に持ち球を質問することがある。本人が「スプリット」と言うか、「フォークボール」と答えるかが“線引き”になっているとかいないとか…。(スポーツライター・飯山満)