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「警視庁捜査一課」ナイツ塙が深夜の通販番組でアップグレードできた理由

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ナイツ・塙宣之

 お笑い芸人が俳優の世界で花開くことは、もはや当たり前だ。もともと芸人養成学校で演技を学び、コントで力を発揮しているからだ。ところが、ナイツ・塙宣之の場合は違う。18年に「警視庁・捜査一課長season3」(テレビ朝日系)で本格的な連ドラに初挑戦すると、ネットは騒然。最初はシンプルに「大根(役者)」と叩かれたが、徐々にエスカレート。こわばる表情に「表情筋が殉職してる」、2回棒読みが続いたときは「棒棒鶏」とやゆされ、ネットはいつしかナイツの漫才同様、卓越した表現を競う様相を呈した。

 放映中の「警視庁・捜査一課長2020」でも続投。主役の内藤剛志演じる警視庁捜査一課長・大岩純一の公用車の運転担当刑事・奥野親道を熱演している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、この数週間は撮影スケジュールが大幅に変更されているが、俳優・塙は健在だ。

 そんな塙が、同じく演技力が著しく乏しい相方・土屋伸之と出演しているレギュラー番組が「カイモノラボ」(TBS・MBSほか)だ。平日深夜に放映されている通販番組。ナイツの2人に、中村静香、大石参月といったキレイどころがMCとして脇を固める。

 通販番組はある種、芸人殺しだ。ボキャブラリーの豊富さやセンスは求められるものの、芸人に必要不可欠な話術が月夜の提灯となるからだ。通販番組における芸人の立ち位置は、目の前に運ばれてきた商品の購買意欲をそそる営業トークとオーバーリアクション。物を相手にした演技力がものを言う世界だ。

 ここで面目躍如となるのが、“棒棒鶏”塙。前回の連ドラ出演時にネットを大喜利状態にしたことでメンタルをやられたのか、以来は週に24~26本ほどドラマを観るようになった。反して、お笑い番組を観る時間が大幅に減るというマイナス効果も生んだ。

 視聴者・出演者の両側面を知る生活に切り替わったことで、それまでは避けていたリアクション芸を会得した。これが、「カイモノラボ」で思いのほか、役立った。
 塙は、「すごい」「安い」「信じられない」「(この安価で)大丈夫ですか?」といった通販定番のリアクションワードを並べるだけで終始しない。言葉を発さず上を向く“グランメゾン流リアクション”をやって見せる。また、全身を伸ばして卒倒寸前に陥るといった分かりやすい動きまでする。高機能からは想像できない安価、この落差が通販番組の醍醐味。塙は、警視庁捜査一課に身を置いたことで、この醍醐味をちゅうちょなく示してみせるようになった。

 深夜、意図せず飛び込んでくる通販番組。今後は、商品よりアップグレードした塙に刮目してほしい。

(伊藤由華)

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