4組には共通点がある。漫才頂上決戦「M-1グランプリ」の審査員を務めた経験を持つのだ。中川家は礼二、サンドは富澤たけし、華大は大吉、ナイツでは塙。塙は18年から2年連続で審査員席に座り、的を射たジャッジ、アドバイスが、視聴者とM-1ファイナリストたちをうならせている。
塙の芸人人生に箔がついたのは、07年。史上最年少で漫才協会の理事に就任し、ヤホー漫才でM-1常連になったあたりだ。2人の出現によって、“本拠地”浅草は活況を呈した。久しく浅草の演芸場しか知らないあまたの大御所芸人たちは、相次いでテレビで紹介された。それによって、若い成り手も増え、漫才協会の知名度も右肩上がりだ。
昨年は、ネタ分析本の「言い訳〜関東芸人はなぜM-1で勝てないのか」(集英社新書)が、10万部を超える大ベストセラーになった。お笑いのジャンルはテレビ視聴率こそ稼げるものの、出版物となるとグンと数字が落ちるのがこれまでの通例だった。その常識を打ち破る塙が出した結果は、奇跡の数字といえた。
八面六臂の大活躍だが、それでも今なお年間300本前後のステージをこなす。その上で今年1月17日から、新番組がスタートした。その名も「ナイツのこれイチ!」。エモい零細発信局で知られる東京MXテレビで、およそ7年ぶりに抱えるレギュラー番組だ。世の中の知られていないイチバンを取材して紹介する、生活お役立ちバラエティだ。
芸人、タレント、企業代表のゲスト3人が、司会のナイツと対面で座る席の前列。後列には、素人感満載の女性プレゼンテーターが陣取る。番組セットは、実に簡易的だ。地上波深夜、ネット番組より数段見劣りする。制作費が驚くほど安いのだろう、女性プレゼンテーターは私服で、ほぼ普通のOLだ。彼女たちは、初回からしでかした。大胆にも、プレゼン内容を把握していなかったのだ。
番組冒頭で、「ドッキリ(番組)みたい(なセット)」と遠回しに番組批判をした塙。エンディングでは、「ギュッとすれば、我々2人だけでもできた」とぐうの音も出ない本質を突いた。
芸能人なら、喉から手が出るほど欲しいレギュラー番組。そこでも媚を売らず、我を貫くのが、塙という芸人が持つ毒。需要が途絶えない理由は、ここにある。
(伊藤由華)