死亡事故でテレビ番組が打ち切りとなるのは、今回が初めてではない。同じフジテレビでは『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』で、1993年に収録中に死亡事故が起きている。『進め! 電波少年』(日本テレビ系)のテーマソングでもおなじみの香港の人気バンドBEYONDの黄家駒さんが、収録中のセットから転落し頭を強打し、亡くなってしまったのだ。事故を想定し、セットの下に緩衝材などを用意するといった安全対策がなされておらず、最悪の結果を招いてしまった。これを受け、番組は打ち切りとなった。
これ以降も、テレビ番組のロケでタレントが骨折を始めとする重傷を負うケースは相次いでおり、安全対策が徹底されているかは疑問が残る。
もう一つ、死亡事故で打ち切りとなった番組としては、2003年の『雲と波と少年と』(同)がある。「電波少年」シリーズの後番組として「癒し系バラエティ」として始まった。しかし、放送第1回の直後に、メイン企画であった「屋久島便り」の担当スタッフが飲酒状態で車を運転し、死傷する事故を起こしてしまう。スタッフの危機管理意識の甘さが招いた結果と言えるだろう。
さらに、この企画で家族を説得し、住民票を移し、子供も転校させ屋久島に移住した島崎俊郎が、実質的に置いてけぼりになってしまった。
死亡事故は絶対にあってはならないもの。そのため、テレビ番組が打ち切りとなるのは相当な処分と言える。ただ、番組が打ち切られたことで、すべてが「幕引き」となってしまう感も否めない。本当に大切なものは、同じ過ちを繰り返さないための再発防止などの事後対策の徹底だろう。
特にフジテレビは、前出の『やるやら』の死亡事故のほかにも、『愛する二人別れる二人』(1999年)、『発掘!あるある大事典II』(2004年)、『ほこ×たて』(2011年)がやらせ発覚を受けて打ち切りになるなど、番組制作を巡りたびたび問題を起こしている。過ちの教訓が受け継がれ、生かされているのかは疑問が残るだけに、フジテレビには猛省を求めたい。