ペナントレース開催の方法を模索するオーナー会議が開かれた(5月12日)。会議後の発表では「かつてない危機的状況」「今後も(開催に向けて)努力していく」といった“抽象論”しか出ていない。開催されたとしても、日程問題などさまざまな点で「変則」となるのは避けられないが、そんな“特殊なペナントレース”のカギを握るのは、北海道日本ハムファイターズの栗山英樹監督になりそうだ。
「6月19日の開幕が濃厚ですが、政府の緊急事態宣言が解除されることが大前提であり、同26日、7月3日にずれ込む可能性も出てきました」(在京球団スタッフ)
6月19日よりも遅れての開幕戦。その場合の試合数は「1カード20試合強」、ペナントレースは100試合余となる。野球関係者から試合数の話が多く出る。しかし、この理由は「試合減=収入減」の経営危機だけが理由ではなかった。
「100試合程度で決まるタイトルに価値があるのかどうか…」(球界関係者)
投手の最多勝、セーブポイント、打者の本塁打王、打点王、盗塁王などの数字は寂しいものになるだろう。懸念されているのは最多勝や本塁打王のように数字を積み上げていくものではなく、計算式に出場試合数が絡む首位打者、防御率などのタイトルだ。
首位打者のタイトルについて、こんな情報も聞かれた。
「日本ハムの近藤健介です。バットコントロールに関しては天才、でも、故障が多いので出場試合数が少なく、規定打席数に到達できないシーズンもありました」(前出・同)
思い出されるのが、2017年だ。近藤は6月に右太股を痛め、さらに同月下旬、椎間板ヘルニアが見つかり、3か月もチームを離脱した。9月下旬にはチームに復帰したものの、当然、規定打席数443には及ばなかった。しかし、シーズンを通して231打席に立って、打率4割1分3厘の数字を残している。当時の報道でも伝えられたが、「年間100打席以上に立った選手の史上最高打率」である。
「怪我の多い選手、怪我さえなければ…」
これが、天才・近藤に対する評価であり、プロ8年でも首位打者のタイトルを獲得できなかった理由でもある。
仮に今季、1カード22試合・110試合のペナントレースが行われた場合、規定打席数は「110試合×3・1=341打席」。近藤は昨季、600打席に立っているので、その半分程度の打席数で“勝負”できるのだ。
「栗山監督が近藤の起用法を変えてくるかも。1打席でも多く立たせてやろうとし、3番で使ってくる打線も考えられます」(ベテラン記者)
栗山監督は「1番投手・大谷」の打順でファンを驚かせたこともあった。昨季、600打席に立って3割2厘の好打率を残した近藤なら、短期決戦の今季に“4割超え”を実現させるかもしれない。プロ野球史上最高打率は、1986年にバース(元阪神)が残した3割8分9厘。130試合制の当時、541打席に立ったバースの記録と、さらに200打席も少ない数値を比較するのはおかしな話だが、栗山監督は選手思いでも知られている。近藤の“バース超え”をサポートする場面も出てくるだろう。変則・短期決戦で誕生しそうな新記録の価値が問われそうだ。(スポーツライター・飯山満)