千葉ロッテマリーンズは、今季の開幕投手を美馬学だと発表している。フリーエージェントで「巨人に交渉勝ち」して獲得した右腕である。期待の大きさはもちろんだが、美馬自身も新天地での働き甲斐を実感しているだろう。
「美馬はソフトバンクとの相性も良く、好スタートを切りたいとする井口(資仁)監督の計算でしょう」(スポーツ紙記者)
しかし、この抜擢には「危険な賭け」も含まれていた。
昨季の美馬は、ソフトバンク戦7試合に登板し、3勝1敗。防御率1・97とバツグンの強さを誇った。ソフトバンクを初戦で叩けば、チームは間違いなく勢いに乗る。この戦略は間違っていないが、こんな指摘も聞かれた。
「背番号18は何をやってるんだよ!?」
今季より、エースナンバー18を背負うのは、7年目の二木康太だ。昨季まで18番を背負っていた涌井がトレード放出され、その継承者として選ばれた。近年で言えば、「18番」は、故・伊良部秀輝さん、清水直行、涌井秀章らが付けてきた。二木にはまだ投手タイトル獲得の実績はなく、将来性を重視しての継承劇だった。
その二木について、聞いてみた。
「近年、『今年こそは』と首脳陣が期待してきた投手です。後半戦に息切れするというか、スタミナ不足の印象もありますが、低めにボールを集め、粘り強いピッチングができる好投手です」(プロ野球解説者)
期待のエース候補を開幕投手に抜擢すれば、ファンも「チームの若返り」「世代交代」の印象を持つだろう。1月の自主トレ期間中の情報だが、「井口監督は二木か、背番号が『16番』に昇格した種市の開幕投手を考えている。美馬は第2節の初戦に」とも言われていた。
二木、種市ともに、キャンプ、オープン戦を順調に送っていた。それでも、井口監督が開幕投手を美馬に決めた理由が興味深い。
「二木はプロ3年目に一軍に定着しました。以後、先発投手としてやってきましたが、まだ2ケタ勝利を収めたシーズンはありません。二木に2ケタ勝利を収めさせるため、あえて開幕戦を外したんです」(球界関係者)
開幕カードを「3連戦の初戦」と置き換えれば、その意味は明白だ。3連戦の初戦はエース投手をぶつけてくることが多い。「エース対決」となれば、ロースコアで相手打線を抑えていたとしても、黒星を喫するケースも少なくない。つまり、井口監督は二木にエース対決を避けさせ、勝ち星を伸ばすつもりなのだ。“温情”、“親心”だが、これではエースナンバー継承の前段階ではなく、前々段階だ。
「打線にも懸念材料が残っています。サードのレギュラーを予定している移籍2年目のレアードですよ。前半戦は爆発しましたが、後半戦はイマイチでした。トータルでの打率も2割4分8厘まで落ち込みました。後半戦のまま、今季がスタートしたら…」(前出・同)
千葉ロッテが鳥谷を緊急で獲得した理由として、レアードへの不安が挙げられている。投手は美馬、打撃陣は鳥谷に助けてもらう。千葉ロッテは世代交代の難しい時期にあるようだ。佐々木朗希が早く一軍に昇格し、ストレートで三振の山を築く…。そんな“爽快な野球”を見せてもらいたいものだ。(スポーツライター・飯山満)