「ロッテ選手の方から鳥谷に挨拶に行きました。雰囲気の明るいチームだし、すぐに馴染めそうな感じでした」(スポーツ紙記者)
新背番号「00」のアップ用ジャージーに袖を通し、打撃練習にも加わった。阪神時代と変わらない柔らかく、シャープなスイングで快音を響かせていた。その打撃を見る限り、阪神退団後もバットを振り続けてきたことが分かる。また、守備練習が始まった頃には、井口資仁監督(45)の姿も。セカンド、ショートの両方に入って軽快な動きを見せていた。それに指揮官も満足げな表彰を浮かべていたが、これがヤバイのだ。
「鳥谷はプロ1年目から、ずっと一軍でプロ野球生活を送ってきましたからね。調整のため、二軍の練習施設を利用したことはあっても、二軍戦には出場したことがないはず。長期に渡る連続試合出場の記録が証明するように、ずっと一軍でやってきましたから」(プロ野球解説者)
そもそも、二軍選手とは、大きく分けて2通りのパターンがある。一軍を目指して頑張っている「これからの選手」と、すでに一軍レベルにはあるが、故障・リハビリなどのため、一時的に調整している選手だ。鳥谷は、後者のパターンということになる。
前者の選手は鳥谷のような調整組を“標的”にするのだ。
「二軍でチャンスを待っている若手、中堅は、鳥谷のような一軍での実績を持つ選手に対し、“全力”でぶつかってきます。『何で!?』って思うくらい…」(関係者)
実は、現役生活が晩年に差しかかったベテランが「もっともイヤな思い出」として語ることが多いのが、二軍調整なのだ。ベテラン投手であれば、持ち球の変化球をテストするつもりで投げたら、若手は意地になってバットに当てようとする。バッターであれば、「ぶつけても」の気持ちでインコースを攻めてくる。それで自信喪失になった話はないものの、二軍戦での成績が上らず、一軍復帰が遅れることが多々あるという。
「三浦大輔(現DeNA二軍監督)の引退を早めたのは、二軍戦とも言われています。技巧派投手だった三浦は、2ストライク前に積極的にバットを振ってくる二軍選手に、やりにくいと感じていました。そもそも、ベテラン投手には、2ストライクまで追い込む変化球と、ウイニングショットで使う変化球があります。後者のボールをなかなかテストできず、苦労していました」(前出・同)
対戦相手が一軍バッターであれば、ウイニングショットまで待っても対応できるとし、ギリギリまで甘いボールを待つ。二軍選手には一球で仕留める打撃技術がないから、初球から打って出る。これに苦しむのだ。
ロッテ関係者によれば、鳥谷の実戦デビューは3月17日の巨人二軍戦になるという。阿部慎之助二軍監督のもとで、一軍昇格を狙う“技術不足の若手投手”が、「鳥谷を抑えた」という実績を求めて、初球からエグイコースを攻めてくるのは必至だ。
繰り返しになるが、鳥谷には二軍経験がない。こうした独自の雰囲気に思うような調整ができないのでは…。(スポーツライター・飯山満)