8日午後0時半ごろ、歩行者天国で賑わう日曜日の秋葉原が地獄図絵と化した。小型トラックで通行人をはねた後、ナイフで次々と切りつけたとして、警視庁万世橋署に殺人未遂の現行犯で逮捕された静岡県の派遣社員加藤智大容疑者(25)は、調べに「人を殺すために秋葉原にきた」などと供述。メイドさんやカメラ小僧らアキバ系住民は白昼のアキバ無差別テロに激怒した。
7人が死亡、10人が重軽傷を追う大惨劇は前ぶれもなく突如始まった。
毎週アキバに通う文京区の男性会社員(37)は、この日も趣味のカメラでコスプレする女の子らを撮りにきて事件を目撃した。「小型トラックのレンタカーで静岡ナンバー。信号無視で歩行者天国に突っ込んできて、通行人を狙って蛇行しながら次々バーンとはねていった。思わず息をのむしかなかった。明らかに殺意がありましたよ、あれは」と興奮冷めやらぬ様子で振り返った。
「アキバを狙うなんて最低。女の子と話したり写真を撮ったり楽しいことをやっているやつを恨んだのかもしれない。アキバが好きであっても、マナーをわきまえなかったり、暴走ぎみだったり、場違いだったりでなかなか溶け込めない人もいますから」(同)
首にかけた高級一眼レフカメラで反射的に惨劇を激写したものの、撮れた絵のむごさに絶句。すぐにデータを消去したという。「凄惨のひとこと。亡くなった方の冥福を祈りたい。カメラのデータは消せたが、こっちのデータは残っちゃう」と頭を指差した。
事件現場はJR秋葉原駅電気街口から徒歩5分圏内。賑わっていた歩行者天国には立入禁止のテープが張られ要所に警官が立った。若者2人が携帯カメラで撮影しながら「死にたくねー」と他人事のようにつぶやいた。
現場近くの大型家電量販店は臨時休業となった。店前には惨劇を報じる大手新聞2社の号外が置かれ、通行人が携帯カメラで黙って撮影しては去っていく。頻繁にアキバに通う新宿区の男性会社員(32)は「なんで秋葉原なのか。生活に疲れたというのが犯行動機らしいが、みんな疲れているんだよと言いたい。これでアキバが危険と騒がれると、メイドカフェで働いている子なんかが困る。最近も過激な路上パンチラでイメージが悪くなったばかりだし、ホコ天廃止が心配」と憤慨した。
巫女のコスプレで働く20代の女性店員はパトカーのサイレンや怒鳴り声で事件に気づいたという。「店を留守にできないし、怖いのもあって外には出ませんでした。人出が多いから狙われたのかもしれませんが、仲間と『なぜアキバなのか』と話していたんです」とおびえた声で話した。
駅前でビラ配りをしていた派遣型メイドの女性(19)は事件直後、事務所から駅前に向かう途中で人だかりを見て「交通事故かな?」と思ったという。「血を流して倒れている人がいたんです。でも、あとから通り魔と知って驚いた。怖い。ちょっとアキバのイメージが変わった。でも、この街が好きだから仕事は続けます」とメイド仲間に肩を寄せた。
犯行に使われたのは刃渡り約13cmのサバイバルナイフ。加藤容疑者は上着の内ポケットにも折りたたみナイフを所持していた。事件前日に静岡で2トントラックをレンタルしており、計画的犯行だったとみられる。
調べに興奮することもなく素直に応じているといい、動機について「生活に疲れた。人を殺すつもりで秋葉原にきた」などと供述しているという。一見おとなしそうにみえる加藤容疑者は、地元静岡からなぜアキバまで出向いて凶行に及んだのか?アキバを狙った理由は何なのか?捜査の進展が待たれるところだ。