「年下のくせに、なんて生意気な男なの」
「そんなふざけたヤツは許せないよ」
そうやって話は盛り上がっていった。晴美も最初は、せいぜい愚痴を言う程度のつもりだったのかもしれない。しかし、話しをしていくうちに、3人ともどんどん加熱していった。
そして、「けしからん男を呼び出して、懲らしめてやろう」という話になってしまった。
そこで、すぐにその場から携帯で青木君に電話した。しかし、不在で彼は電話に出なかった。これがさらに3人の怒りに火を注いでしまったのである。
「電話にも出ないなんて、ますます許せん」
さらに怒りを加熱させた3人は、そのままでは収まらなかった。そこですぐさま、青木君の自宅に押しかけたのだ。怒りに満ちた3人の女性が何の前触れもなしにやって来て、青木君もさぞ驚いたに違いない。
そして、自宅にいた彼に一方的に詰め寄ると、顔面や体などに数十回も殴る蹴るなどの暴行を加えた。男性とはいってもまだ18歳の少年、しかも成人女性3人が相手となれば、青木君とて防ぐ手立てなどはなかっただろう。
ほとんど袋叩き状態になった青木君だったが、その上に3人はタバコの火を彼の手のひらや肩などに繰り返し押し付けて苦しめた挙句、「うちの後ろには右翼がいるんだからな」などと言って彼を恫喝した。
それでも怒りが収まらなかったのだろうか、3人はボロボロになった青木君を連れ出すと、近くにあった消費者金融に彼を引っ張っていった。青木君に限度額いっぱいの50万円を借りさせて、それを脅し取ろうとしたのである。
しかし、3人は融資契約にあまりに無知であった。法律によって、未成年者はクレジットやローンの契約はできないことになっている。当然、青木君が申し込んでも断られる。
そして、彼の様子を不審に思った消費者金融の職員が、青木君の父親に連絡を取った。それによってことの次第を知った父親は、すぐさま警察に通報した。その結果、晴美以下3人はその翌々日の8月12日、恐喝未遂容疑で広島中央署に逮捕されてしまった。たかが「フった」「フラれた」という程度が、とんでもない事件に発展してしまったものである。
(了)