4月3日、第91回選抜高等学校野球大会(以下=センバツ)の決勝戦が行われた。習志野は野球の伝統校だが、センバツの決勝進出は初、東邦は平成元年以来、30年ぶりのファイナルステージ進出となった。その東邦が勝ち上がっていく過程で、こんな声もささやかれていた。
「やっぱり、今大会もそうなったか」――。センバツのジンクスに関する声だ。
「習志野は明豊に勝っての決勝進出となりました。明豊は昨秋の神宮大会覇者の札幌大谷に勝っています。札幌大谷が敗れたとき、取材陣がざわつきました」(スポーツ紙記者)
習志野も神宮の準優勝校・星稜に勝利している。
センバツ大会では、前年の地区秋季大会、そして、秋の全国大会ともいえる明治神宮野球大会の結果を参考に出場校を決定する。神宮大会を踏まえれば、同大会の優勝校、準優勝校がセンバツで上位進出してもおかしくはない。しかし、どういうわけか、神宮大会の優勝校、準優勝校がセンバツで苦戦しているのだ。神宮優勝校が翌年春のセンバツを制したケースは、01年の報徳学園以降はない。
神宮優勝校がセンバツで勝てない理由が問われているのだ。春夏甲子園の出場経験を持つ関東圏の強豪私立校指導者が、こう言う。
「『ひと冬、越えて』ということかな。どの学校も冬場の基礎体力トレーニングを重要視している。ピッチャーは下半身を鍛え、直球の速度も増し、見違えるほどの成長を見せます。冬場の練習でチーム全体の力も変わってくるので」
また、「打撃力」をセンバツのポイントに挙げる声も聞かれた。それは「センバツは投手力で勝つ」傾向を逆手の取った対策である。そもそも、センバツは3月下旬に始まるが、1、2月の寒い時期は実戦練習の機会も限られている。そのため、打撃陣の調整が遅れ、「投高打低」の大会となる。
「冬場は打撃練習に時間を割いて好投手に対抗する力を養う。同時に右方向への打撃(進塁打)を徹底させ、1点を確実に積み上げていく意識を植えつけるんです」(関西圏の指導者)
打撃練習を重視する指導者は増えているようだ。
だが、これらの指導者の声は「対策」であって、神宮大会の覇者がセンバツで苦しんでいる理由にはならない。
前年秋よりもさらにさかのぼって、夏の甲子園大会の地方予選について考えてみた。都道府県の予選で敗れた高校は、夏休みから新体制がスタートする。1、2年生による新体制となり、夏休み中から練習が始まる。代表校が甲子園で戦う最中に、新チームは練習をし、他校とも試合するのだ。甲子園に出場した高校は、早くて8月下旬、9月から始動する。その約1カ月の差が、神宮大会につながる秋季大会の勝敗にも影響しているのではないだろうか。
どの学校にも勝つチャンスはある、前歴は関係ない。それが、学生スポーツである。
(スポーツライター・美山和也)